石垣島住民の防災意識が高い理由 「明和の大津波」から250年、生かす教訓 


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 【石垣】八重山、宮古地域で約1万2千人が犠牲になった1771年の「明和の大津波」から、24日で250年の節目となった。甚大な被害が出た石垣島では現在も大津波を教訓として各地に自主防災組織を設置するなど、いつ起こるか分からない災害に備えている。

石垣市内の小学校裏に設置されている自主防災倉庫(手前)と備蓄倉庫(奥)=20日、石垣市

 犠牲者を弔う明和大津波遭難者慰霊之塔がある石垣市宮良地区。宮良小学校の校庭裏には2種類のプレハブ倉庫が設置されている。一つが水や食料品などを保管する備蓄倉庫で、もう一つが炊き出し用の釜や消火器具などを置く自主防災倉庫だ。市防災危機管理課によると、備蓄倉庫は市内11カ所にあり、本年度中に10万食の食料を備蓄する予定だ。自主防災倉庫は市内計45カ所に設置されている。

 県によると、2019年4月現在、県全体の自主防災組織の組織率は31・8%にとどまっているが、石垣市は92・2%と、県内の市で最も高い。

 明和の大津波では島内の約40%の面積が浸水したと言われている。島は中央に山が連なり、沿岸部を一周する形で道路網が整備されている。仮に津波に遭った場合、島内の至る所が分断される恐れがあり、行政による救助に時間がかかる可能性もある。

自主防災倉庫の内部。市は自主防災組織を置く地域に消火器具や担架などを貸し出している

 「石垣は離島県のさらに離島。災害が起きた時に被災地が孤立する時間が長くなる恐れがあるために備えが重要だ」。市防災危機管理課の大濵武課長は、市全域で災害対策を進める理由を説明する。

 ソフト面でも対策を進めている。市は2月、災害時の避難や救助について知識と技能を持つ「防災士」養成を目指し、市民から資格取得希望者を募った。市が受講費の大部分を補助し、自己負担を軽減した結果、一気に80人弱が資格を得たという。市は全島で防災士を増やし、自主防災組織を担う人材となることを期待している。

 大濵課長は「いくら費用をかけても地域が動かなければ助かる命が助からない。石垣は大津波に遭った歴史もある。市民が真剣に防災に取り組む意識を育てられるようにしたい」と話している。

(西銘研志郎)