【深掘り】与党が県政批判で亀裂深まる 重要選挙へ各陣営に火だね うるま市長選 


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
開票で接戦の状況が伝えられる中、中村正人氏(手前)に話しかける赤嶺昇県議会議長=25日夜、うるま市みどり町の選挙事務所

 25日に投開票されたうるま市長選は、現市政の継承を訴えた中村正人氏=自民、公明、会派おきなわ、無所属の会推薦=が「オール沖縄」候補を約2千票差でかわし、保守地盤を死守した。県政与党の一角である会派おきなわが中村氏を推薦し、同会派の県議会議長・赤嶺昇氏が県政批判を展開したことで、与党内の亀裂がより深まった形だ。一方、接戦を制した県政野党・中立勢力だが、下地幹郎氏の復党問題が絡み、自公と下地氏率いる保守系議員グループとの間にも確執が生まれた。来年秋の県知事選や今秋までに実施される衆院選などの重要選挙に向け、各陣営内に火だねを残した。

 ■予想外の接近

 18日、中村陣営の出陣式でマイクを握った赤嶺氏は「刷新するべきは玉城県政だ」と、現市政の刷新を訴えるオール沖縄陣営をけん制。市内各所で「コロナは人災だ」などと痛烈に批判した。中村氏の当確後には記者団に「来年の(知事)選挙も総合的に判断しないといけない」と述べ、対立継続も示唆した。

 中村選対関係者によると、野党側への赤嶺氏の参戦は浦添市長選から企図されていたが、調整不足で頓挫。うるま市長選では早くから中村氏に推薦を出すことが決まっており、緊密な共闘態勢は選挙最終盤まで続いた。同会派の新垣光栄氏も企業を回り、水面下で支持固めに動いた。
 自民県連幹部は「票に直結したかはどうであれ、あそこまでの知事批判は予想しなかった。陣営の結束を強めてくれた。知事選へも弾みになる」と笑みを浮かべる。

 玉城知事に厳しい対応を迫ることもあった会派おきなわではあったが、赤嶺氏が批判のギアを一段上げたことに与党幹部は「応援するにしろ候補者を評価すれば良いだけで、知事批判をする意味が分からない」と憤る。別の与党関係者も「知事選に向けて自民に秋波を送っているのでは」といぶかる。

 会派おきなわの平良昭一代表は「与党の立場というのは変わらない」と強調する。ただ、もつれた不信感を解消するすべは見つかっておらず、今後の重要選挙での共闘態勢構築には不安を残したままだ。

 ■つぶされたメンツ

 一方、24日の中村陣営の打ち上げ式。推薦する政党・会派の幹部や国会議員が前に並んで最後の訴えを重ねる中、無所属の会の県議らと中村氏を応援した下地幹郎氏は、集まった支持者の後方であいさつの様子を見守った。

 自身に近いグループや一部経済界の支援を受けながら自民への復党を目指す下地氏に対し、自民県連は復党に反対している。それを背景にした選対判断で前に立たないよう求められたという。メンツをつぶされた格好となった下地氏側は、この対応に抗議した。

 下地氏の関係者は「こういうやり方をするなら、今後は会派おきなわと組んだら良い」と吐き捨てるように語る。「オール沖縄」と対峙(たいじ)し、県政奪還に向けて協力してきた野党・中道勢力も懸念材料を抱える形となった。

 オール沖縄で主導的立場にいた社民党の一部が立憲民主党に合流したことを受け、オール沖縄内でも同党系会派の結成に向けた調整が水面下で進む。重要選挙に向けて各政党・会派の動きが活発化する中、今後の勢力図に変化があるのかも焦点になりそうだ。

(大嶺雅俊、安里洋輔、吉田健一)