【深掘り】市民生活より「組織」…宮古島市議会野党、人事案反対の理由


社会
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 沖縄県宮古島市の副市長人事案が野党の反対で3月に続き、再び否決された。臨時議会開会前は野党内でも賛成が過半を占めるとみられていたが当日に急転し、野党全員が反対した。副市長不在による市民サービス低下など市民生活への影響より「賛否ある場合は多数決で全体の行動を決める」という「組織の論理」を野党が優先した。

■市長給与減案など否決

副市長人事案の採決で、賛成少数で否決した宮古島市議会=4月28日

 座喜味市政誕生から3カ月、サトウキビ農家への補助事業予算や市長給与減額案なども圧倒的多数を占める野党の反対により削除、否決されている。有権者が選んだ市長の政策、人事が進まない市民不在の議会が続いている。

 4月28日の臨時議会後、野党議員団の真栄城徳彦会長は取材に「野党の中でも賛成、反対があった。反対が多く、議場では組織決定として全員反対した」と説明した。

 野党全員が支援した下地敏彦前市長を破り、座喜味一幸市長が勝利した1月の市長選直後から野党は副市長人事案を巡って、座喜味市長に攻勢を仕掛けた。

 市長就任1週間後の2月1日には会見を開き「新型コロナ対策を実施するためにも速やかに議会に人事案を諮るべきだ」などと報道陣に強調し、人事案の早期提出を市長に迫った。

 市は県職員で前市政時に財政課長として市に出向した経歴を持つ伊川秀樹氏=市平良島尻出身=から2月に内諾を得て、3月の定年退職後の就任を念頭に3月議会に提案した。だが、野党は早期提案を求めたにもかかわらず「島内に長い間、住んでいない」「人となりをよく知らない」などを理由に否決した。

 これを受け、座喜味市長は「理解を深めてもらうため」として、伊川氏と野党との意見交換会を開いた上で再提案したが、野党は再び突っぱねた。

■賛否に思惑

 反対討論した野党市議は「2月の(副市長人事提出)要請をほごにして状況悪化を招いた」や「公約実現が進んでいない。政策立案能力と実行力が欠如している。あいまいな政策で人事をしてもうまくいかない」などと強調した。

 市長の市政運営手腕を理由に反対した形だが、合理性の欠ける内容に傍聴していた市民からは失笑が漏れた。

 結果として野党は2度とも全員反対の立場を取ったが、再提案では野党内でも賛成する議員が出ており内情は違う。真栄城会長は「(野党内の)賛成の議員は(否決に)不満だったかもしれない。議員それぞれ思惑がある。後援会の立場など総合的に判断したと思う」と明かした。

 市当局側には野党の変化の背景に10月に予定される市議選があると見る向きもある。市幹部の1人は「選挙を控え市民の心証を考えたら、反対一辺倒は続けられないだろう」と語った。 

(佐野真慈)