台湾パイン、沖縄県産と競合も 輸入倍増、中国禁輸の思わぬ余波


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 中国が台湾産パイナップルの輸入を停止した問題を受け、日本国内への台湾産パインの輸入が3月以降増加している。財務省貿易統計によると今年3月の輸入量は1129トンで、前年同月の390トンから約2・8倍になった。沖縄県内スーパーでも台湾産パインを取り扱う店が増えている。県内の生産者からは、県産パインとの競合を懸念する声も聞かれる。

中国95%

輸入された台湾産パインを手にする担当者=4月30日、那覇青果物卸商事業協同組合

 中国政府は台湾から輸入したパインに有害生物が見つかったとして、今年3月以降、輸入停止措置をとっている。これまで台湾産パインは輸出の約95%が中国向けだった。日本などで台湾産の消費促進などに取り組んでいることもあり、農林水産省の担当者は「中国の禁輸措置が(日本への輸入増加に)影響しているのではないか」と推定する。

 2020年の台湾からのパイン輸入量は2143トンだった。今年3月だけで昨年1年間の半数以上が輸入されたことになる。台湾産パインは3~5月が出荷のピークだ。台湾メディアの報道によると、3月中に日本から6200トン分の受注があったという。

初入荷

 県内で輸入物の野菜・果物を取り扱う那覇青果物卸商事業協同組合でも、4月30日までに台湾産パイン10トンを初めて入荷した。品種は「台農17号」で、日本の検疫をクリアして県内に輸入される。酸味が強いフィリピン産と対照的に、甘みが強いのが台湾産の特徴だという。

 名嘉重則理事長は「顧客の反応も見ながら入荷を判断していきたい。県産と競合しないように、(県産出荷が本格化するまでの)5月中くらいまで出していければ」と語る。

 県中央卸売市場で青果物の競りを運営する沖縄協同青果の4月30日の取引では、八重山産が1キロ当たり415円だったのに対し台湾産は260円、フィリピン産が229円(いずれも中値)だった。台湾産の単価はフィリピン産よりは高いものの、それでも県産と比べ価格優位性がある。

 県内各スーパーでは4月以降にサンエー、イオン琉球、金秀商事などが台湾産パインの取り扱いを始めた。金秀商事での販売価格はフィリピン産より2割ほど高いが、同社担当者は「味もよく、買い物客からも好評だ」と説明する。

「脅威だ」

 台湾産との競合の影響について不透明さはあるが、県内のパイン生産者に警戒感もある。品種にもよるが、八重山や本島北部など県内のパイン収穫は3~7月ごろで、5月にピークを迎える。農業関係者は「ピークがかぶり、売価も似たり寄ったりだ。影響はゼロではない」と語る。

 県内のあるパイン農家は「やはり脅威だ。市場価格下落に影響すると、JAの農家の買い取り価格にも影響してくる」と不安を口にした。

(塚崎昇平)