0.172秒差の痛恨…當銘・大城組が五輪逃す 中間地点の「不運」 カヌー・アジア選手権


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男子カナディアンペア1000メートルで2位となり、東京五輪出場枠を逃した大城海輝(奥左)、當銘孝仁組=パタヤ(RCAT提供・共同)

 カヌー・スプリントの東京五輪アジア予選を兼ねるアジア選手権は5日、タイのパタヤで開幕し、初日の3種目に挑んだ日本勢はいずれも出場枠を獲得できなかった。各種目1位が出場枠を得られ、男子カナディアンペア1000メートルに出場した當銘孝仁(沖縄水産高―大正大出、新潟・三条市スポーツ協会)・大城海輝(沖縄水産高―鹿屋体育大出、三重県スポーツ協会)組は1位のカザフスタンペアに0.172秒及ばず、3分37秒780で惜しくも2位に終わった。女子カヤックシングル500メートルの多田羅英花(愛媛県競技力向上対策本部)は3位、男子カヤックペア1000メートルの新岡浩陽(滋賀レイクスターズ)・青木瑞樹(自衛隊)組は5位に終わった。

やり切れない0.172秒差/2人の10年、東京で咲かせず

 男子カナディアンペア1000メートルは予選がなく、7艇による一発決勝。當銘孝仁・大城海輝組は中央の4レーンについた。

 中間地点を前にアクシデントが襲う。艇に浮遊物が掛かった感触があり「パドルが重くなった」(當銘)。ここで飛び出したのは、ライバルに挙げていた隣の3レーンのカザフスタンペア。負けじとぴたりと付ける。「こんなところで終われない」と當銘。ダイナミックなこぎでじわじわと差を詰め、残り100メートルを切った最終盤でついに追い抜いた。

 2人の脳裏に確信がよぎる。「いけるっ」。しかしカザフスタンペアも譲らない。横一線のままゴールラインへ。最後の一こぎでわずかに先へ出たカザフスタンペアに軍配が上がった。その差、0.172秒。この瞬間、ペアでの五輪出場への道は絶たれた。

 終了後、桟橋には限界まで力を出し尽くし、ぐったりと倒れ込む當銘の姿が。脱水症状でもうろうとし、病院に搬送された。意識が回復すると同時に「この差か…」と、惜敗の実感も増幅した。一つ後輩の大城とペアを組んで約10年。「同じ沖縄出身で自国開催の五輪に出るのは特別なこと。やっぱり2人で出たかった」。普段、あまり感情を表に出さない大城も「0・1秒差は悔いが残る」とやり切れない気持ちを吐露した。

 まだ五輪出場への望みは残る。開催国枠での出場を懸け、5月末に石川県で行われる代表選考会にいずれもカナディアンシングル1000メートルで出場する。「最後まで期待してくれる人たちのためにも、頑張りたい」とくじけた心をたきつける當銘。大城も「まずは選考会に向け本気でやりたい」と気持ちを切り替えた。