【記者解説】PFOA除去へ沖縄県追加支出 米軍基地調査や連携不可欠


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北谷浄水場(資料写真)

 沖縄県企業局北谷浄水場で実施している設備改良の総事業費が、当初予算から膨れ上がった背景には、有機フッ素化合物(PFAS)の中でも特に発がんリスクなどが指摘されるPFOSやPFOAの危険性に関する認知度の広がりと、国際的に規制強化の動きが広がっていることへの対応がある。

 県内7市町村に給水する北谷浄水場の水質は、多くの市民の生活や健康に直結するため、水道水の安全性について、徹底した対応を求める住民の声は強い。県は人体に影響を及ぼさないとされる基準値以下ではなく、限りなく検出値をゼロにする対策の必要性に迫られている。浄水場が取水する河川に含まれるPFASの汚染源が米軍基地であれば、本来は米軍に原状回復義務がある。その水質改善に必要な費用負担を、住民が支払う税金や水道料金によって担っている現状は不条理と言わざるを得ない。

 防衛省は、取水源のPFAS汚染と米軍の関係性は立証されていないと主張し、県が求める補償には応じていない。基地と汚染の因果関係を認めていない一方で、今回の設備改良には補助金という形で、事業費の3分の2に当たる約10億6千万円の資金提供に合意している。

 こうした国の二重基準の対応は、原因究明を棚上げした上で、取りあえず水道水から汚染物質を除去することで問題を封じ込めようとする姿勢に映る。

 県は高機能の粒状活性炭を導入することで、原水中のPFOSやPFOA濃度の低減を図るが、対症療法には限界がある。取水源となる河川の水質改善という抜本的な解決には、まず汚染源の特定が不可欠だ。

 米軍基地内の立ち入り調査を含め、県と国、米軍が連携して取り組まない限り、課題解決の道筋は見通せない。

(当銘千絵)