2年連続で「慰霊の日」を新型コロナウイルスが直撃した。慰霊祭などの中止や規模縮小は昨年より増加、今後さらに増える可能性もある。コロナ禍が長期化する中、沖縄戦の継承や平和教育への影響は必至。戦争体験者の高齢化が一層進む中で、関係者らは「ワクチン接種が進んでいない状況で集められない」と述べ、感染対策が進展しない現状に胸を詰まらせる。
「組織的な慰霊祭ができないのはこの状況だとしょうがない」。那覇市の南洋群島戦没者慰霊碑で慰霊祭を開いてきた、南洋群島帰還者会の上運天賢盛会長は中止したことを残念がった。ただ中止となる他の慰霊祭と同様に、自由参列にする予定で「集まる方々がいるので待機したい」と語る。
ずゐせんの塔の慰霊祭は今年も中止。旧県立首里高等女学校瑞泉同窓会の新元貞子会長(95)は「命のある限り焼香したい」と慰霊の思いは変わらない。
激戦地となった糸満市内では平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が開かれるほか、各学徒隊の慰霊塔などで慰霊祭が予定されている。沖縄師範健児之塔は合同慰霊祭が一度途絶え、2009年に復活した。今年は規模を縮小して開催予定だったが、慰霊塔近くの駐車スペースが利用できなくなったこともあり、昨年に続き中止を決めた。
慰霊祭を復活させた遺族の1人、仲田英安さん(46)は「平和祈念公園から(慰霊塔へ)シャトルバスを出すなどしてほしい」と語り、来年以降は改めて開催する意欲を示した。
例年、一中健児之塔には首里高校、二中健児の塔には那覇高校から数百人が集まり、生徒たちは同年代が学徒として動員された事実を知る機会となっていた。大幅に規模を縮小する予定で、生徒の参列は生徒会役員らに限られる。一中健児之塔で慰霊祭を行う養秀同窓会事務局は「来年は元通りにできるかもと思っているが…」と声を落とした。