【記者解説】ワクチン接種7月末までに完了できる? 各市町村、人繰りに必死


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 政府が新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種を7月末までに完了させると号令を掛ける中、県内では那覇市以外の全市町村が7月末には高齢者接種を完了できると回答した。ただ、感染拡大でワクチンの打ち手不足が深刻化する中、自治体職員らは「無理してできると言っている」と本音を漏らす。県内首長には国庫補助事業に関係する官僚ら政府関係者から催促の電話も相次ぎ、「できないと言えない雰囲気がある」(県内首長)という。接種完了に余裕がある状況とは言えなさそうだ。

 7月末の高齢者接種完了は「できない」と回答した那覇市よりも同時期の推定接種率が低い自治体もある。政府は完了の定義を明確に定めておらず、「完了」は自治体の解釈次第でもある。

 本島中部9市町村と中部地区医師会は契約を交わし、集団接種会場に医師や看護師を派遣している。しかし感染拡大で医療現場が逼迫(ひっぱく)し、看護師らの派遣が難しくなり、6月から派遣人員が減る。

 自治体からは「現場を回せる気がしない」と不安が聞こえ、医療関係者からは「慣れてきた医者で対応するしかない」との声が上がっている。

 7月末までに接種完了できないとした那覇市は2日、城間幹子市長が緊急会見し、ワクチン接種に当たる医師が不足しているとして、医師の協力を求めた。

 うるま市は個別接種に協力する医療機関に、支援金を給付することを決定。医療機関の確保を図る。

 本島北部では、北部地区医師会が検診を一部休止して名護市のワクチン接種に医師や看護師を充てると決めた。

 自治体や医療関係者は医療体制維持のために感染防止を呼び掛けながら、ひねり出すように人員をやりくりしている状況だ。
 (島袋良太)