尖閣、竹島…国境離島が緊張の火種に 土地規制法案 きょうから参院委審査


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尖閣諸島(資料写真)

 自衛隊や米軍基地、国境離島など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案は、8日から参院内閣委員会で審査が始まる。規制行為や調査範囲のあいまいさが問題となる中、国境離島の指定を巡り国際的緊張を招いたり、新たな利権が生じたりする可能性も浮上し、より慎重な議論が求められている。

 「尖閣諸島も竹島も、日本の安全保障上非常に重要な土地だ」

 5月21日の衆院内閣委員会で自民の杉田水脈氏は両地域を名指しし、法案に基づく区域指定を求めた。

 それに先立ち立憲民主の屋良朝博氏は4月の衆院安保委で、国境離島を巡り「指定しなければ日本の防衛は大丈夫かという議論が出るだろうし、指定したらしたで新たなハレーションを巻き起こすのではないか」と述べ、政治的な課題となることに懸念を示していた。

 杉田氏の質疑は早くもその動きが表面化した形だ。ただ、政府は竹島や尖閣諸島の指定に慎重だ。

 政府は区域の対象となる国境離島として484島を挙げたが、日本が「現に保全管理している」という前提を付けた。韓国が「不法占拠」する竹島はこれらには含まれていない。

 一方、日本の施政下にある尖閣諸島は、そのほとんどを国が所有する。民有地がある久場島も政府が借り上げて米軍に提供しており、公的な管理下にある。

 所有者や賃借権者の情報を調べる権限を国に与える法案の仕組み上、国が管理する土地を指定する必要性は薄い。政府関係者は「今回の法案ではなく、外交で解決すべきだ」と語るが、「政治的アピール」のために使われる懸念は残る。

 区域指定や政府による土地買い取りの規定を悪用し、政治家などからの圧力にさらされて利権化しかねないとの懸念も出てきた。

 同法には、注視区域内の土地を国が買い取る規定がある。所有者の諾否は任意で強制性はない。だが、所有者から買い取りを求められた際の対応はあいまいだ。法文上は買い取る土地の対象として「国が適切な管理を行う必要があると認められるもの」との条件があるが、解釈の幅が広い。

 政府関係者は法案が「基地周辺に緩衝地帯をつくるのが目的ではない」と理解を求めているが、法案の条文があいまいなことが懸念を呼ぶ要因となっている。(知念征尚)