【識者談話】改正国民投票法の問題点は? 小林武・沖縄大客員教授


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 改憲手続き法自体には有料広告や最低投票率、公務員の投票運動の問題など改正すべき点は多い。最大の問題は法律成立が憲法改正の呼び水になることだ。コロナ禍であえて法律改正する理由や必要性はない。

 憲法自体が定めているように、憲法改正は国民が主権者としてなす仕事だ。国会は改正案を国民に提案するにとどまる。憲法改正を多くの国民が要求した際に国会は動くべきだ。

 各種世論調査で、憲法改正は国民の多くが要求するテーマにはなっていない。憲法に賛否はあるが「変えなければいけない」という流れではない。(戦力不保持などを定めた)憲法9条を主要なテーマにした改憲問題を国民が望んでいない。

 憲法審査会は憲法のあり方全体を考えることが任務だ。憲法が実際の政治で正しく運用・実現しているのかという点に目を向ける必要がある。

 沖縄はとりわけ憲法9条が実現されていない。米軍普天間飛行場でここ数日騒音がひどく、宜野湾市にも苦情が多く寄せられている。米軍基地の運用は横暴を極めている。

 国会は社会の現状を憲法に照らして点検・審議すべきだ。国民が今求めていない改憲手続き法の改正はこれきりにして、憲法審査会は原点に戻る必要がある。

(憲法学)