オンライン授業「学び合う環境」を…美術や筋トレ、「しゃしんをとろう」も 名護高、佐敷小の取り組み


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 新型コロナウイルス感染拡大に伴う県独自の学校休校措置を契機に、一部の学校はオンライン授業の実施に踏み切った。琉球新報の調べによると、今回の休校期間中からオンライン授業を全面実施できると答えた市町村はゼロだったが、試験的実施に踏み切った学校ではこの休校期間中に、取り組みを少しずつ前進させている。休校を契機にオンライン授業実施に踏み切った学校での、取り組みの一部を紹介する。 (松堂秀樹、嘉数陽)

<名護高校>感染対策と学び両立

自宅でできる自重トレーニング「名護ザップ」の動画を確認する体育科の教師ら=10日、名護市の県立名護高校

 【名護】名護高校(辻上弘子校長)は全校生徒995人を対象に、朝のホームルームと毎日3時間の授業をオンラインで実施している。同校が重視するのは(1)感染症対策と学びの保障の両立(2)生徒とのつながりを維持し、健康状況など把握(3)主体的・対話的で深い学びの視点で改善を続ける―など。情報処理班の教員を中心に校内で研修会を開くなどオンライン授業の技量向上を続ける。

 「36.4度です」。朝9時から始まるホームルームで教師らがパソコンのカメラ越しに「体温は」と呼び掛けると、Tシャツ姿の生徒が報告する。玉城光師(ひろし)教頭は「休校期間中も生活リズムを崩さず、健康的に過ごしてほしい」と話す。

 同校は4日午後、オンライン授業の進め方など対策会議を開いた。スマートフォンで授業を受ける生徒が多いため、小さな画面を長時間見させるのは目に悪いと判断。3時間のみの授業にすることを決めた。午後は教員同士の反省点を話し合い、翌日の授業の改善につなげている。

 実習科目などでもオンライン授業を導入する。美術の授業では知名伸教諭が教育実習生のアイデアを取り入れ、自宅で用意できる鉛筆と紙でデッサンの課題を与えた。知名教諭は「完成した絵は休校開けに発表させる。表現力も高めてくれたら」と期待する。図書司書の真栄城百花さんは著作権が切れた文学作品を読める「青空文庫」のサイトで、作品のリンクを貼って文学作品を紹介している。「読めば答えられるクイズも用意している。なるべく本に親しんでほしい」と話した。

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[体育]体力低下防止へ「名護ザップ」

 休校期間中は運動量が減る―。生徒の体力低下を少しでも防ごうと、前里紋子教諭ら体育教師らが考案した在宅でできる自重トレーニングが「名護ザップ」だ。同校の体育科教諭で、県高体連ウエイトリフティング専門部専門委員長の渡慶次晃教諭らも動画に登場して模範演技を見せる。

 腕立て伏せやスクワットなど基礎的な筋力トレーニングの動画は約10分。生徒は動画を見ながら一緒にトレーニングし、感想を提出する。

 前里教諭は「各生徒が動画をどれくらい見たかも確認できる。30秒しか見ずに『きつかったです』と感想を書き込む生徒もいるが、体力づくりも大切だと思って取り組んでほしい」と話した。

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[家庭科]全生徒の映像つなぐ

 「みんな、お顔を見せてください」。教育実習生2人と共に家庭科のオンライン授業に臨んだ島袋里映教諭は、画面越しに声を掛けた。「えー。映るの嫌だ」とこぼす生徒に「みんなの表情も見たいから」と諭し、クラス全体の映像と音声をつなげた。家庭や仕事における性差別の問題をかみ砕いて説明しながら、あらかじめ準備した教材の穴埋め問題を一緒に解いた。

 佐久田伸一教頭は「慣れるまで時間はかかるはずだが、受験もオンラインということもあり得る。生徒にもオンラインで問題を解いたり発表したりすることに慣れてほしい」と願った。

生徒の解答を共有するなどして双方向の授業に取り組む小野敬道教諭=10日、名護市の県立名護高校

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[数学・国語]双方向の環境づくり意識

 辻上弘子校長が「他の教員への、オンライン授業の進め方をかみ砕いて伝えてくれる」と話すのは、数学の小野敬道教諭。デスクトップ、ノートパソコン、タブレットの3種類の端末を使いこなし、生徒との双方向の授業を進める。

 証明の問題を出題し、生徒から送られてきた解答の画像を確認。「いい解答を本人に確認した上で共有している。学び合う環境づくりを意識している」と説明した。

 国語科の翁長秋乃教諭は「1人で教科書を読むのは難しい」と自宅で学習する生徒を思いやる。動画投稿サイト「ユーチューブ」で探してきた教科書のまとめ動画も活用し、生徒が教科書に興味を持てる教材を作った。翁長教諭は「リクエスト曲も募集し、最後の方で紹介している。生徒が楽しく参加できるよう工夫していきたい」と述べた。

※注:辻上弘子校長の「辻」は一点シンニョウ

<南城市立佐敷小学校>学習用端末 使用法指導/「リトルティーチャー」育成

学習用端末を操作する南城市立佐敷小学校の1年生=15日、南城市立佐敷小学校(画像の一部を加工しています)

 「先生、写真送ったよ」。自信たっぷりに報告したのは、南城市立佐敷小学校1年生の男子児童。同校では新型コロナウイルスによる休校期間中、登校せざるを得ない児童に、学校で学習用端末の使い方を指導している。

 前城光告(みつのり)校長は「子どもが“リトルティーチャー”として育てば、休校明けに他の児童に指導するとき、教える側に回ってもらえる」と期待を込める。

 休校期間中の15日、低学年の教室では子どもたちが学習用端末を使って課題をこなしていた。1年2組の教室では、児童が「しゃしんをとろう」という課題に挑戦した。児童3人が自分で学習用端末を起動して、写真を撮り教師へ送信した。わずか数分で課題をこなし笑顔を見せた。

 想像を上回る早さで端末を使いこなす子どもたちを見て、教師たちは「低学年は少人数で教える必要がある。休校期間をうまく活用できてよかった」と手応えを語った。

 同校では4月から学習用端末の使い方の指導を進めていた。休校措置に合わせて、5~6年に学習用端末を配布した。オンラインで開く「朝の会」でその日1日分の課題を提示し、子どもたちは学習用端末で課題をこなして送信、提出する。

 「休校明けの授業にも応用できる」と、特に教師たちの期待が高まっているのは音楽の授業。リコーダーの使い方など、音楽教師が教材動画を前もって撮影しておいた。学習用端末に動画をダウンロードすれば、インターネット環境がない場所でも繰り返し見ることができる。指使いをアップで確認できることも利点の一つだ。

 同校の担当者は「コロナの感染拡大後、飛沫(ひまつ)感染を懸念して、どうしても鑑賞授業が多くなった。学習用端末を活用すれば、普段の授業でもこの動画を活用してリコーダー指導ができる」と話した。

 前城校長は「ネット環境の整備など課題はまだたくさんある。だからといって、解決を待っていては前進しない。子どもたちと一緒に取り組んで、互いに課題を洗い出して、より良いものにしていきたい」と強調した。