【深掘り】全国知事会が国関与「見直し」提言、背景に辺野古 沖縄県「全国で起こり得る」


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 全国知事会は、地方分権推進改革に関する国への提言書に、国が自治体の判断を直接否定できる「裁定的関与」の制度見直しを盛り込んだ。提言書の原案は、裁定的関与について「検討を深める事項」に位置付けていたが、沖縄県が「見直し」と明記するよう要望して表記が変更された。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、国の関与で県の判断が覆されてきた経緯が背景にある。

 裁定的関与は、国などが審査請求などの手続きを通じて地方公共団体が判断した処分に関与する制度だ。不利益を被った人がより上の行政機関に不服を申し立てることができ、私人の権利利益を迅速・公平に守る意味で残されている。

 一方で、国が直接、自治体の処分を覆すことにもなり得るため、地方自治の観点から問題視されてきた。全国知事会も2008年、裁定的関与について「国と都道府県、市町村が対等な立場で責任を果たせるよう見直すべき」と提言している。ただ、その後、国が表立って自治体の判断を変更するような例がなく、議論は下火になっていた。

 国による裁定的関与の弊害が顕著になったのは、辺野古新基地建設を巡る国と沖縄県の対立だ。15年に翁長雄志前知事が仲井真弘多元知事による辺野古埋め立て承認を取り消した。国は行政不服審査制度を利用して県の取り消し決定を無効化し、工事を再開した。

 沖縄防衛局という行政機関が私人の権利救済のための制度を用いたことは、多くの行政法学者から「制度の乱用」「私人なりすまし」と批判を浴びた。だが、18年に県が埋め立て承認を撤回した際も国は同様の手法を取った。効力の一時停止にとどまらず、最終的に県の処分取り消しにまで踏み込んだ。

 5月にオンラインで開かれた全国知事会の地方分権推進特別委員会で、謝花喜一郎副知事は「全国の自治体で起こり得る問題だ」と訴えた。裁定的関与の問題に全国の注目を改めて集める狙いがある。

 琉球大の徳田博人教授(行政法)は「県が共感を得られる闘いをしているから全国知事会も提案を受け入れたのだろう。意義は大きい」と語った。 (明真南斗)