【記者解説】石垣市自治条例 市民の権利を奪う改正 問われる二元代表制


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 28日の石垣市議会は、市民の権利を奪うとともに、行政と議会の二元代表制の在り方に疑問を抱かせる結論を出した。与党会派議員から一部改正案が出された市自治基本条例。条文43条には条例の見直しについて5年以内ごとに市民の意見を踏まえて条例を見直すことが規定されている。

 規定に基づき、条例の見直しを検討する審議会は3月、条例の課題を指摘する答申を中山義隆石垣市長に出した。これを受け市は条例改正に向け動き出していた。ただ、今議会では市執行部の条例提案は間に合わないため、しびれを切らした議員が改正を提案した形となった。

 改正案は答申に沿った内容だ。ただ市が条例改正に向けた調整を進めている最中で、議会による条例改正は審議会の存在を軽視する結果となった。

 一部与党会派議員は「内容には賛同できても方法がおかしい。執行部の提案を待つべきだ」として採決を退席し、野党会派議員は「審議会に諮問して改正案を作っている市長の行いを議員から否定される構図だ」と指摘した。

 一方、中山市長は「議員には提案の権利がある。市議会は議決機関なので議会の判断を行政は尊重しなければならない」と語り、肯定する見解を示した。

 今回の動きは、その時の市議会の多数派が、行政運営に関わる事項を行政に先立ち決定するというあしき前例となりかねない。

 行政の形骸化にもつながりかねない今回の条例改正。市議会の意義が問われている。
 (西銘研志郎)