沖縄振興計画って何? 沖縄県だけ違う仕組みになった理由<そこ詳しく!>


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 県が2022年度からの新たな沖縄振興計画の素案を1日に公表したね。そもそも沖縄振興計画って、何だろう。記者に聞いたよ。

日本復帰を機に設定 新たな計画を作成中

梅田正覚記者(政経グループ)

 りゅうちゃん 沖縄振興計画って、どういう計画なの?

 梅田正覚記者 沖縄が日本に復帰した1972年以来、政府は沖縄に対して全国の都道府県にはない特別な措置を取っているんだ。その特別措置の下に、沖縄が抱える課題の解決や将来像の実現に向けた政策の方向性が書かれているのが沖縄振興計画で「振計」と呼ばれているよ。

 りゅうちゃん どんな特別措置があるの?

 梅田記者 大きな柱として、四つの制度があるよ。道路や橋を造るなど、自治体が公共工事をする時には、国から補助金がもらえるんだ。沖縄県の場合、国からもらえる補助金の割合(補助率)が全国の他の自治体よりも高く設定されるんだ。これが一つ目の「高率補助」制度だよ。

 二つ目は沖縄経済に特化した金融政策を行う「沖縄振興開発金融公庫」。

 三つ目は、予算の「一括計上方式」だね。全国の都道府県は、次の年に必要な予算を国の各省庁と直接折衝をして、額が決まるんだ。でも沖縄の場合は、内閣府が一括代行して、予算折衝を各省庁とする仕組みになっている。

 四つ目は「一括交付金」制度。県や市町村が地域の実情に応じて事業を選び、内閣府に申請して交付金をもらう制度だよ。地域固有の課題に対応できるとして、市町村から評価する声が多いんだ。

 りゅうちゃん そもそも、どうして沖縄振興をすることになったの。沖縄戦が関係しているのかな?

 梅田記者 そうだね。太平洋戦争が1945年に終結後、日本は駐留軍に占領され独立国としての地位を失っていたんだけど、52年に独立を果たしたんだ。だけど、沖縄は、日本本土と切り離されて米国の施政下に約27年間も置かれたんだ。

 ようやく72年に日本に復帰したけど、本土との経済格差が開いていた。それに当時の政治家には悲惨な沖縄戦や沖縄だけを長い間、日本から切り離したことに対する罪滅ぼしの意識があったんだ。そういったことを踏まえて、沖縄への特別措置が必要と判断されたと言われているよ。

 りゅうちゃん これまでの振興計画はどういう感じだったの。

 梅田記者 復帰から2001年度までの30年間の第1次から3次の計画は、沖縄振興開発計画で「開発」という言葉が付いていたんだ。大きな目標は「本土との格差是正」で、道路や橋などのインフラ整備が進んだんだ。この時期に沖縄自動車道(高速道路)の整備や沖縄記念公園(海洋博公園と首里城公園)などが整備されたよ。

 02年度から始まった第4次からは、本土の後を追う振興計画からの転換を図り、「開発」の文言が外れたんだよ。この計画で目標としたのは「民間主導型の自立経済の構築」だったんだ。

 特区(特別区域)制度や沖縄科学技術大学院大学(OIST)の創設が決まり、アジア・太平洋地域の発展にも沖縄が貢献する視点が盛り込まれたよ。

 本年度は第5次沖縄振興計画の最終年度だよ。この計画を策定した時は地域主権を掲げる民主党が政権党だったんだ。沖縄が主体性を持って沖縄振興計画を策定する制度に変更され、一括交付金も創設されたよ。県が10年度に初めて策定した長期構想「沖縄21世紀ビジョン」の前期計画に位置付けられているよ。そのため、第5次計画は「沖縄21世紀ビジョン基本計画」とも呼ばれているんだ。

 りゅうちゃん 次の振興計画の素案はどんな内容?

 梅田記者 世界的に課題となっている温室効果ガスの削減やデジタル化などを進め、感染症や災害などに強い「安全・安心で幸福が実感できる島」を目指すとしてるよ。それに、沖縄の豊かな自然や文化などの「ソフトパワー」を生かし、世界水準のリゾート地の形成も目指すとしているんだ。

 りゅうちゃん 新しい沖縄振興はどうやって決まるの。

 梅田記者 内閣府の沖縄振興審議会が、新たな沖縄振興の方向について議論中だよ。秋ごろまでには結論が出ると言われているよ。国政与党の自民党や公明党でも議論が始まっていて、今年中には何らかの結論が出るんだ。県はこれから素案を基に新たな沖縄振興計画の必要性を訴えるため、政府との交渉を本格化させるんだ。