【深掘り】沖縄県のワクチン第3会場も那覇 場所選定に他市から不満も


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会見で感染予防と来県自粛を呼び掛ける玉城デニー知事=19日午後、県庁(代表撮影)

 県の設置としては、3カ所目となるワクチン接種会場は、那覇市若狭の那覇クルーズターミナルに21日開設することが決まった。「自治体接種会場」の枠組みを使い、那覇市のファイザー製ワクチンの在庫を共有する形で、設置にこぎ着けた。県は政治、経済の中心地となる那覇市に設置することで、県全体の接種率向上を目指す考えだ。

 ただ、那覇市内には、既に県広域接種センターが県立武道館に設置されているため、設置場所の選定を巡り疑問の声が出ている。19日に謝花喜一郎副知事へ要望書を提出した松本哲治浦添市長は「説明、コミュニケーションが足りない」と県の対応を批判した。

 すれ違い

 8市長が連名で要望書を提出した背景には、「ワクチン不足」が目の前に迫る状況がある。国は高齢者接種の7月完了を目指し、各地に大量にファイザー製を供給してきたが、7月以降の供給量は大きく減少すると見込まれている。

 こうした中で、那覇市内に県の3カ所目の接種会場が設置されることが決まった。中村正人うるま市長は「(設置されても)沖縄、うるま市以北は足を運ぶ時間はない。那覇への配分率が高まっているが、われわれは極端に減っている」と不満を漏らした。

 自治体の懸念と県の方針はすれ違う。謝花副知事は、那覇市の事業所や行政機関などに市外からも多くが通勤していることなどを説明し、設置が県全体の接種率の上昇につながるとの見解を示した。

 誤算

 県によると、6月22日に県議会で3カ所目の接種会場の予算が成立したものの、政府はモデルナ製ワクチンの新たな供給を「慰霊の日」の同月23日で停止した。国の「急な変更」(玉城デニー知事)に伴い、6月下旬以降、県は設置方法の再検討を迫られた。

 さらに、ワクチン確保の見通しが立たない中、県の担当部局は本島内の市部に対してワクチン在庫の余力がないか、照会をかけていた。一連の経緯が、自治体の県への疑念を深めた。

 19日の要請で、謝花副知事は、那覇市以外からワクチン供給を受けることはないと否定し「ワクチンを奪い合うことはあってはならない」と打ち消した。

 政治的批判

 第3の接種会場の設置を巡り、下地幹郎衆院議員が県に働き掛けた経緯も影響した。第3会場は5億7千万円の予算が計上され、委託業者が県外の医師らを来県させ、接種に当たるとみられている。予算額が大きく、報酬を支払う仕組みとなったことで政治的な抵抗や批判も出ている。

 玉城知事は19日の記者会見で、説明不足を指摘されていることを巡り「もう少し早めに連絡すれば良かった。市町村と情報共有して、希望する多くの方にワクチンの接種を進めていきたい」と述べた。自治体が抱える不公平感や不満を受け、さらなる施策展開も求められている。
 (池田哲平)