香港紙・リンゴ日報廃刊 沖縄移住増の契機に 香港関係者、自由なき故郷と決別


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「香港人の雨の中の別れ」を1面の見出しにした最後のリンゴ日報紙=6月24日(提供)

 中国に批判的な香港紙、蘋果日報(リンゴ日報)が6月下旬に廃刊した。民主派新聞として対中批判を続けてきた同紙の廃刊を受け、県内在住の香港出身者や、今後沖縄に移住する予定の香港人らが言論の自由の喪失に絶望する声が相次いだ。今後、香港人の沖縄への移住が一層増えるとの見方も強まっている。

 中国が2020年6月末、香港の統制強化を目的とした「香港国家安全維持法(国安法)」を制定して以降、香港人の海外移住は加速しており、沖縄も移住地の一つとして注目を集めている。リンゴ日報の廃刊などで、自由や民主主義への危機感がより一層高まっており、移住コンサルティング会社、万国津梁(浦添市)のテイ・ダニエル社長は「今後、沖縄への移住を希望する香港人が着実に増えるだろう」と見ている。

 16年に家族と沖縄へ移り住んだ40代の男性は「リンゴ日報は政府を監視する香港唯一の報道機関だった。廃刊後、香港政府はより一層香港人の言論を統制するだろう」とため息をつく。「香港はもうわれわれが知っている香港ではない。国安法により、公平の法律制度がもう存在しない。これから香港に戻ることもない」と故郷を永遠に離れる決意を述べた。

 国安法の施行を受け、沖縄への移住を決めた30代後半の男性は「小学校時代からリンゴ日報を購読してきた。リンゴ日報の廃刊は香港の民主文化が消失したことと同じだ」と悲しげに語った。

 この男性は「香港政府は、反対派の意見を受け入れないことは間違いだ。これは問題解決に臨む姿勢ではなく、問題がさらに悪化するだけだ」と指摘する。「毎日、友人や同僚からカナダやイギリスへの移住情報が入ってくる。中国がいつか香港人の海外移住を規制することを見据え、早く沖縄へ行きたい」と話した。

 単身で沖縄に移住予定の40代女性は「リンゴ日報の廃刊は想定内のことだ」と冷静に話した。だが、国安法による罰則や規制など「今後香港にいる家族の生活が急激に変化するのではないか、心配している」と懸念を募らせた。

 (呉俐君)

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