沖縄空手飛躍へ 喜友名 空手金 県、無形遺産も目標 空手振興施策に追い風


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県庁の空手振興課

 県は、喜友名諒選手の東京五輪金メダル獲得を追い風として、「空手発祥の地・沖縄」を軸とした施策展開に一層注力する考えだ。2022年度の沖縄の日本復帰50年に合わせ、沖縄空手の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録も目指していく。 

 スポーツ空手と沖縄伝統空手は「車の両輪」との認識に立ち、喜友名選手の活躍は沖縄空手の振興につながるとの期待感も空手関係者の中では高まる。将来的には沖縄伝統空手振興会(豊見城市)を核とした海外支部を立ち上げる考えだ。ただ、県は沖縄空手振興に向けた基盤整備を進めるものの、遅れも目立つ。

達成3割

 現在の沖縄振興計画の折り返しを迎えた2016年、県は計画改定に伴い、「沖縄伝統空手の発信強化」を盛り込んだ。同年度に文化観光スポーツ部に空手振興課を設置し、17年には豊見城市豊見城に沖縄空手会館を開所した。沖縄空手の今後20年間の方向性をまとめた「沖縄空手振興ビジョン」(期間・2018~37年度)と各種施策の工程表「ロードマップ」(18~22年度)も策定している。

 ロードマップは、各指導者で基準が明確ではない段位授与の公認制度創設や振興会によるライセンスビジネス、道場経営のフランチャイズ方式など革新的な内容が盛り込まれているが、これらは実現していない。47の施策項目に対する23の成果指標のうち、20年度末までに達成したのは3割だった。

 ロードマップで18~19年度に予定していた振興会の法人化が大幅に遅れ今年3月に完了したことや新型コロナウイルスの影響で協議が停滞したことが大きな要因だ。

後継者不足

 空手の愛好家は世界で1億3千万人いるとされる。スポーツとしての空手の注目度は高まりつつあるが、沖縄空手は後継者不足が深刻だ。県が16年に県内203道場に課題を聞いたアンケートでは、「門下生の人数が少ない」が28・6%で最も多く、次いで「道場の規模が小さい」が17・7%、「後継者
がいない」が14・8%だった。

 一部の道場は多くの門下生を集める一方、小規模の道場では門下生不足に頭を悩ましている。こういった不満や考え方の違いが影響して、08年に結成した振興会の法人化が遅れた。

 県は沖縄空手の無形文化遺産登録で、後継者不足に悩む道場にも注目が集まることを期待する。その実現に向け「流派研究連絡会」を設置して、沖縄空手の共通理念を抽出した。沖縄空手とは「沖縄の歴史・風土に育まれた平和を希求する精神性を顕現・象徴する護身のための武術」などと見解をまとめた。

 県の施策展開は振興会の法人化が肝だ。1期目のロードマップ最終年度となる22年度から県から職員を数人派遣し、てこ入れする予定だ。空手振興課の佐和田勇人課長は「沖縄の空手界が一つになることが必要だ。将来的に自走できるように体制を構築したい」と話した。 

(梅田正覚)