軍用地51ヘクタール先行取得 県と5市町村 一括交付金286億活用


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 跡地利用推進特別措置法(跡地法)に基づき、一括交付金を活用した米軍用地の先行取得事業で、県を含めた県内6自治体が2012~20年度の9年間に286億円を費やし、合計51・1ヘクタールの土地を取得したことが6日までに分かった。一方、21年度末に76・9ヘクタールを目標としていたものの、達成率は66・4%にとどまっている。跡地法や一括交付金制度の期限が21年度末に迫る中、各自治体からは制度延長を求める声が上がっている。

9年間で目標の66%

 先行取得制度を活用した取得面積などは、琉球新報が各自治体に聞き取り調査を実施してまとめた。制度の対象は米軍普天間飛行場などの施設で、各自治体は21年度も計5・4ヘクタールの取得を計画している。計画通りに取得が進むと、取得面積56・6ヘクタール、目標達成率73・4%となる見通しだ。

 ただ、地権者が自治体に用地を売却する際、最大5千万円の税控除が受けられる制度などを定めた跡地法の適用期限が21年度末で切れる。用地確保や地権者の合意形成が遅れ、開発に長期間を要した那覇新都心の事例もあり、公共用地の先行取得は返還を控える自治体にとって喫緊の課題だ。

 跡地利用に詳しい沖縄持続的発展研究所の真喜屋美樹所長は「自治体の財政規模や用途の違いもあるので必要面積の目安は設定しづらいが、公共用地の先行取得は必須だ。だが県内自治体の財政力では難しいため、制度の延長が必要だ」と指摘した。県は国に対し制度延長を求め、内閣府は22年度の概算要求に両制度の延長を要望している。

 宜野湾市は一括交付金創設前に11年間かけて、市単独予算で普天間飛行場の先行取得を進めた。ただ財源面で課題があり、約2・2ヘクタール(契約額約8億2100万円)にとどまっていた。一括交付金創設後の12年度からは約38・5億円を費やし、7・5ヘクタール取得している。

 一方、周辺の環境変化により、支障が生じている例もある。「24年度またはその後」の返還が予定されるキャンプ瑞慶覧ロウワー・プラザ住宅地区の先行取得を目指す沖縄市は、20年度末までに目標1・7ヘクタールに対して0・6ヘクタールの取得にとどまっている。市担当者は「軍用地料が上がり続けていることや周辺にショッピングモールが建設され、街並みの変化や地価が上がったことが影響してか、売却の申し込みが少ない」と話した。

 真喜屋所長は「県内自治体の財政力では一括交付金があっても十分な面積を確保できるかは分からない。国費による用地取得の支援や国有地の払い下げも実施するべきだ」と指摘した。

 (梅田正覚)