円盤投げの知念豪さん、名門ゼンリン監督に就任 県記録保持者、陸上盛り上げへ


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引退後、円盤投げの師匠だった畑山茂雄さん(右)と対談する知念豪さん(写真提供:ゼンリン)

 昨季限りで現役を引退した陸上円盤投げ県記録保持者の知念豪さん(29)が4月、選手として7年間所属した実業団の名門ゼンリンの監督に就任した。各選手とも個別に鍛錬を積むため、所属選手に直接指導する機会は少ないというが、陸上の人気向上に力を注ぐ。「もっと競技のことを知ってもらい、見てもらいたい」。陸上人生の第2章に足を踏み出した。

 那覇西高で競技を始め、3年時に全国総体6位。順天堂大を経て、2014年からゼンリンに所属した。日本選手権7連覇などの実績を持つ先輩の畑山茂雄さんに師事し、16年には自己ベストの58メートル36で日本選手権準優勝を果たした。その後はフォームの改造が裏目に出て伸び悩み、目標だった日本代表には手が届かなかったが、最後まで自身の可能性を突き詰め「すっきりして終われた」と昨年11月に現役を退いた。

 社業をこなしながら陸上に携わりたいという思いがあり、社から広報を兼任しての監督業を提案され今年4月に監督に就いた。昨年12月で創部30周年の節目を迎えたゼンリン陸上競技部は、1991年から全日本実業団対抗選手権で総合4連覇を達成し、多くの日本代表を生み出してきた実業団の名門だ。部の目指す姿は「世界で戦える精鋭のアスリート集団」。現在所属選手は4人と少数だが、男子走り幅跳びの城山正太郎と男子110メートルハードルの高山峻野は東京五輪に出場し、存在感が際立つ。

円盤投げ選手として活躍していた現役時代の知念豪さん(写真提供:ゼンリン)

 監督ではあるが、選手たちはそれぞれにコーチを付けて練習場所も異なるため、体づくりの方法などを助言することはあっても技術面を指導する機会は少ないという。役割に掲げるのは「アスリートが気持ち良く競技を行えるための環境整備」だ。大会出場の手続きの他、日々選手とのコミュニケーションを密にして社内外に活躍や将来の強化方針を発信する役割を担う。

 現役の頃は国内トップの選手がそろう大会に多く出場したが、閑散とした競技場も多く目の当たりにしてきた。「『自分の記録を超える』という陸上の根本的な部分を魅力として捉える人が増えたらいい。それが選手の力にもなる」と、競技の人気向上という大きな目標も掲げる。選手による陸上教室の開催や競技ごとのルール、見どころの発信にも力を入れていく。

 東京五輪では同級生で親交の深い重量挙げの糸数陽一や、那覇西高の後輩である走り幅跳びの津波響樹、一つ先輩であるハンドボール女子の池原綾香などゆかりのある選手が多く活躍した。「身近にオリンピックを感じられて、改めてスポーツの素晴らしさが分かった」と刺激を受けたという。「企業スポーツとしての魅力、陸上をどう盛り上げていくかを考えながら監督をやっていきたい」。新米監督の挑戦が始まっている。
 (長嶺真輝)