金武、水源からPFAS 町、1年3ヵ月非公表


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
国の暫定指針値を上回る有機フッ素化合物が検出され、町が取水を停止した地下水の水源=17日、金武町金武

 【金武】金武町民の水道用水として利用される一部の地下水源で、国の暫定指針値を超える有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)のPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)が検出され、町が3カ所で取水を停止していたことが判明した。町は2020年6月に調査を行い事実を把握していたが、1年3カ月にわたって公表していなかった。町は「水道水は指針値をクリアしており安全だ」と強調するが、何も知らずに水道水を利用していた町民からは、町への不信感や健康への影響を不安視する声も出ている。

 指針値超え

 県内の基地隣接地域で高濃度PFAS検出が相次いでいることから、米軍キャンプ・ハンセンに隣接する金武町は、19年度から調査を継続してきた。

 町は地下水の水質調査を20年6月に、河川の調査を20年8月~21年1月に実施。地下水は、金武区の水源3カ所で、国の暫定指針値(PFOA・PFOSの合計が1リットル当たり50ナノグラム以下)の1・7倍~8・2倍の値が検出された。別の1カ所でも19年12月に指針値を超えていた。

 町は3カ所の取水を停止。別の1カ所については県企業局水と混合し、指針値以下にして供給している。町の水道水源は現在、県企業局水が65%、地下水で35%を賄っている。

 河川調査では、金武区にあるキャンプ・ハンセンから海に流れる排水路と屋嘉区の計4カ所で指針値を超えた。

 16日の町議会一般質問で、町当局は河川のPFAS検出について「発生源は米軍キャンプ・ハンセン内」との認識を示したが、地下水については「水脈が特定できず、基地が要因かはっきりしない」と説明した。

 不信感

 地下水の指針値超えを、1年3カ月にわたって町民に知らせていなかった町当局。その理由を「水道水への不安を招く。風評被害も懸念された」と説明する。今回、崎浜秀幸町議が独自に調査報告書を入手し一般質問で追及しなければ、問題は明るみに出なかった。

 町民からは「そんな大事なことを今まで隠していたなんて、とんでもない」「もう水道の水は飲まない」と、町への不信感や健康への影響を心配する声が上がっている。

 公表しなかった町の対応について、崎浜氏は「町民に対して許されないことだ。情報が明らかになれば対策を考えられるが、隠されるとそれもできず、逆に不安は増大する。町は水道水の安全性について、今からでもきちんと町民に説明すべきだ」と強調した。

 「血液検査を」

 地下水は主に金武・並里区で何十年間も水道水として取水され供給されてきた。河川の調査地点の一つ、慶武田川(キンタガー)は昨年の調査では指針値以下の12ナノグラムだったものの、町民が長年にわたり野菜の洗浄などで使用してきた経緯もある。崎浜氏は農作物への影響なども懸念し、「町民の健康を確認するために血液検査が必要だ」と訴える。

 町当局は、水道水のPFOS、PFOAの含有は指針値を下回っていること、人体への影響の科学的検証が十分でないことを理由に「国や県の動向をみて検討する」と慎重な姿勢だ。

 小泉昭夫京都大学名誉教授(環境衛生学)は「自治体も米軍も対応があいまいになるため、(PFOSなどの)法律での規制が必要だ。早急に(住民の)血中濃度測定もすべきだ」と指摘した。町民の安全確保と不安解消に向け、町の丁寧な対応が求められている。

 (岩切美穂、塚崎昇平)