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ドイツ移籍の安間志織 Wリーグ頂点のPGと統率力 開拓者として貪欲に<ブレークスルー>


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ドイツの新しいチームメートと笑顔で写真に納まる安間志織(2列目左端)=ドイツ(提供)

 北谷町出身の安間志織(27)=北谷中―福岡・中村学園女子高―拓殖大出=が8月に、バスケットボール女子ドイツリーグ1部のアイスフォーゲルに移籍した。司令塔のポイントガード(PG)として、昨季はWリーグでトヨタ自動車の初優勝に貢献し、県勢初のプレーオフMVPに輝いた。「人がやらない事をやるのが好き」と語る生粋の開拓者は、新天地でさらなる飛躍を期す。

 ドイツリーグは25日に開幕し、レギュラーシーズンは来年3月まで。安間は8月中旬に現地入りし、既にチーム練習に合流している。

■多様なバスケを

 2017年にトヨタでWリーグデビューを果たした安間。翌年ヘッドコーチ(HC)に就任したスペイン人のイヴァン・トリノス氏に、練習中に「なんでもっとシュートを打たないんだ」と言われた。PGとして学生の頃から得意としてきたアシストに重点を置いたプレーへの指摘だった。「こんなに打っていいんだ」と感じるほど、積極的にゴールを狙うことで相手守備に警戒され、アシストがより効果的になった。

 19年にHCに就いた、同じくスペイン人のルーカス・モンデーロ氏の速い展開のバスケも統率力を磨く要因の一つとなり「もっといろんなバスケを知りたい。海外でいろんな人とプレーすれば今後の財産にもなる」と考えるようになった。

 2、3年前からトヨタに海外移籍の意思を伝え、個人的に英語教室にも通った。代理人を通じて国を問わず移籍先を探し続け、8月上旬にアイスフォーゲルからオファーを受けた。国内屈指のPGに成長し、前季は11連覇中だったENEOSを破ってWリーグの頂点に立った。「まだトヨタの選手とプレーしたい」という思いもあったが、「こんなチャンスは無い」と移籍を決意。東京五輪の代表最終選考で落選したことや年齢を考慮し「このタイミングで挑戦したかった」と、新たな目標を設定して内にある向上心をたきつけた。

■統率力に期待

Wリーグのファイナルでトヨタ自動車を優勝に導いた安間志織=3月、東京

 組織力の高さを武器に東京五輪で銀メダルを獲得し、世界で存在感を増している日本のWリーグに比べ、ドイツリーグのレベルは落ちる。ただ、身長の低さや語学力の問題で日本人が海外リーグで出場時間を得るのは容易ではない。安間は渡独前にHCとオンラインで面談し「若い選手も多い。チームをまとめてほしい」と統率力に期待を寄せられ、語学力が不十分な中でも既に練習試合で主力として出場しているという。

 アイスフォーゲルが日本人選手を獲得するのは初めて。HCからは「私やチームにとっても新しいチャレンジ。一緒に挑戦したい」との熱意も伝えられた。日本にいた頃より報酬や練習環境の質は落ちるが、ドイツと隣り合わせで強豪国であるフランスのチームと練習試合をこなすなど貴重な経験の毎日だ。「誰でも体験できることじゃない。ここでできるチャレンジがある」と新たな環境を心から楽しんでいるよう。

 日本より平均身長は高く「高さに対抗する技術を伸ばしたい」とプレーを磨くモチベーションは高い。五輪の代表から落選した時を「強化合宿の後半は自分のプレーができず悔しかった。合宿後は1週間ほど何もする気が起きなかった」と振り返る。「どんな状況でも自分のプレーをやり続けられるメンタルが大事」と精神面も鍛える決意だ。

 日本女子で海外リーグに挑む選手は少ない。161センチと小柄な安間。「私が挑戦することで『こんなに小さい選手でもできるんだから』と思ってほしい。そのためにも結果を残したい」。パイオニアの1人として、後進に刺激を与えていく。

(長嶺真輝)