さいとう・たかをさん死去 シナリオ作家の平良さん「沖縄の思いくみ取ってくれた」


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首里城がクライマックスの舞台となった「ゴルゴ13」の「沖縄シンドローム」(©小学館・リイド社)

 24日に亡くなった漫画家さいとう・たかをさん作の「ゴルゴ13」には、シナリオ作家として那覇市出身の平良隆久さん(59)も制作に携わってきた。1995年に初版が出た「沖縄シンドローム」は平良さんが初めてシナリオを書いた作品。沖縄出身の自衛隊員らの「沖縄独立計画」を描き、大きな反響を呼んだ。

 同作が発表された95年は、米兵による少女乱暴事件が起きた年。沖縄の過重な基地負担に県民の抗議の声が高まり、全国的な注目も集まっていた。

 平良さんのシナリオに沿いながらも、さいとうさんは当初は想定されていなかった中城(なかぐすく)城跡を冒頭の場に選ぶなど、舞台設定にもこだわった。同作は「ゴルゴ13」30周年記念の読者アンケートでもトップ10に入るほど人気が高いという。平良さんは「さいとう先生は沖縄の気持ちをくみ取ってくれたと思う。感情を入れて描いていた」と振り返る。

 平良さんは「『ゴルゴ13』の最終回は出版社も把握しておらず、先生の頭の中にしかなかった。永遠に分からない」と話し、別れを惜しむ。「普通ならば漫画にするのは無理だという内容でも、先生は描いてくれた。だからこそ、ハリウッド映画並みの予算を組んでつくるようなシナリオを思い切って書くことができた。感謝しかない」と語り、今後も制作メンバーで作品を継承し、創作していく思いを新たにした。