沖縄政策、野党4党首はどうしたい? 振興策や米軍、日米地位協定…


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新たにN2護岸の工事が始まった新基地建設工事現場=8月27日、名護市辺野古

 【東京】自民党新総裁に岸田文雄氏が選出されたことを受け、琉球新報社は2日までに、衆参両院で議席を持つ国政野党の立憲民主、共産、国民民主、日本維新の会の各党首に沖縄に関する政策についてのアンケートを実施した。近く行われる衆院選に向け、沖縄の新たな振興策や米軍普天間飛行場の移設問題、新型コロナウイルス感染症対策、日米地位協定の改定などについて、各党首が独自の政策を打ち出した。(安里洋輔)


枝野幸男立憲民主党代表
コロナ対策と振興一体化 観光業の支援制度創設

 これまでの沖縄振興は社会インフラ整備が中心で、他県との所得格差、高失業率などの解消にはつながらなかった。いわゆる「ひも付き事業」である公共工事が促進される仕組みから脱却し、沖縄の経済的自立を図ることを最大の目標に掲げるべきだ。

 辺野古移設に反対の沖縄の民意を尊重し、軟弱地盤などの課題が明らかになった移設工事を中止する。

 沖縄の基地の在り方を見直し、米国に再交渉を求める。遺骨が混在するおそれのある沖縄本島南部の土砂使用は県民、国民の感情を無視する暴挙だ。工事の中止とともに計画が行われないよう求めていく。

 コロナ対策と沖縄振興策を総合的・一体的に推進する。厳しい状況にある観光事業者への支援制度の創設を検討する。県民の命と暮らしを守るために一括交付金の増額も必要だ。地元企業のセーフティーネットの役割を果たす沖縄振興開発金融公庫は存続させ、機能強化を図る。

 日米地位協定については、改善すべき点が多い。米軍基地の管理権などについて米国と協議し、欧州の米軍受け入れ国と同様に基地使用に関する協定・覚書を締結し、米軍駐留の在り方の改善、基地所在地域の負担を軽減する。


志位和夫日本共産党委員長
経済発展の要は基地撤去 辺野古、技術的にも破綻

 沖縄経済の振興の要は米軍基地の撤去だ。本島の14%以上を占める基地の存在が、主要産業である観光など、沖縄の特性・優位性を生かした経済発展の大きな障害となっている。

 自公政権の振興策は、基地押しつけの「引き換え」で、一括交付金の減額と国直轄の予算増は、「自主性の尊重」を掲げた沖縄振興の趣旨を踏みにじる。

 政府は、辺野古移設に7割以上の県民が反対の意思を示した事実を受け止めるべきだ。超軟弱地盤の存在が明らかになるなど、新基地建設は政治的、技術的に破綻している。戦没者の遺骨が眠る沖縄本島南部からの埋め立て土砂採取計画も直ちに撤回するべきだ。

 コロナ対策では、感染拡大「第6波」を防ぐため、(1)医療・保健所体制の強化(2)ワクチン接種と大規模検査の実施(3)十分な補償―が必要だ。一律10万円の特別給付金支給も必須だ。

 日米地位協定は、有害物質PFAS(ピーファス)の流出問題、米軍機の低空飛行問題解決のためにも抜本的改定が急務だ。コロナの感染拡大期には、米軍関係者が日本の検疫を無視して出入国し、感染拡大の一因になった。米軍に義務づけられていない検疫に国内法を適用するためにも改定が必要だ。


玉木雄一郎国民民主党代表
一括交付金 原点立ち返る 自立へ地域活性化必要

 新たな沖縄振興策の策定にあたっては、沖縄振興一括交付金の制度創設時の原点に立ち返るべきだ。沖縄の判断を尊重し、自立した地域活性化ができる振興策が理想だ。

 米軍普天間飛行場の移設では、米軍キャンプ・シュワブ沖合の軟弱地盤の技術的分析、本島南部の土砂の遺骨の扱いなど懸案について、県民の納得が得られるまで工事は一時凍結すべきで、安全保障戦略、計画自体の精査、見直しの検討が必要だ。

 コロナ禍の経済危機は「融資では解決しない」「猶予ではなく減免を」と訴えてきた。この状況に典型的に当てはまるのが沖縄だ。積極財政で融資の返済負担軽減や税・保険料の減免を行うべきだ。消費税5%引き下げ、一律10万円再支給など50兆円の緊急経済対策に加え、ワクチン接種をQRコードで証明する「デジタル健康証明書」の導入で、経済社会活動と感染症対策を両立させる。

 旧民主党時代の2018年に日米地位協定の具体的な改定案をとりまとめた。

 主な内容は、米軍への国内法適用、米軍施設・区域の排他的管理権の改善などだ。事実上の治外法権を解消し、真の主権確立に努力する。


松井一郎日本維新の会代表
基地負担減 新プラン示す 合意形成へ法制定検討

 沖縄のさらなる発展に向け、現行の沖縄振興特別措置法期限後の振興の在り方について、しっかり検討していく。基地負担の軽減については、日米両政府が合意可能な新たな基地負担軽減プランを示し、地方自治体・地域住民との合意形成に必要な手続き法の制定を検討する必要がある。

 沖縄戦戦没者の遺骨混入の可能性が排除されない土砂が、辺野古沿岸部の埋め立てに限らず、利用されることは犠牲者の尊厳を冒涜(ぼうとく)する由々しき問題だ。一方で、日米合意に基づく普天間飛行場の移設計画は、同飛行場の危険性除去のために遅滞なく進めるべきだ。移設計画の円滑な実現に向け、本島南部からの土砂採取計画の見直しを求める。

 コロナ対策では、効果的に運用されていない現行の地方創生臨時交付金制度を抜本的に見直す。持続化給付金の第2弾など大胆な財政支援が必要だ。ワクチンパスポートなどの活用推進で経済復興を図るべきだ。

 「政治とカネ」の問題への対応は、議員、政党献金の全面禁止、ネット献金を含めた個人献金を促進する。日米地位協定は、県民はじめ日本国民の生命、身体、財産を守り、法の下での平等を保障するために抜本的に見直す。