学校のオンライン授業はいま 学びの保障へ模索続く市町村 通信費がネックに


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オンライン授業をする教諭=8月27日、浦添市の沢岻小

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、沖縄県内の学校でオンライン授業の体制整備が急ピッチで進んでいる。一方で自宅にインターネット環境がない児童生徒もいる。市町村は生徒の「学ぶ権利」に差が出ないよう、必要な家庭への通信機器貸し出しなど対応を検討しているが、費用負担を巡る課題も浮上している。経済的な事情でネット環境がない家庭も一定程度いることが考えられ、困窮世帯に新たな出費を強いることへの異論もある。

 那覇市は2020年度、市内の小中学生を対象に自宅のWi―Fi(無線インターネット)環境の有無を調べた。対象約2万2千世帯のうち約1万8千世帯が回答し、10・4%が「ない」と答えた。これを受け市は全対象世帯の10・4%に当たる2288台の通信機器(ルーター)を導入。夏休み明けの臨時休校中に実施したオンライン授業に伴い約2千台を貸し出したが、貸与費や通信費は徴収しなかった。

 沖縄市も20、21年度に小中学生を対象に家庭のWi―Fi環境を調査し、全体の約5%が「ない」と回答した。市は約500世帯に通信環境がないと想定し、オンライン授業をする場合にはこれらの家庭にルーターを無償で貸与する方向で準備を進めている。

 だが通信料はルーターを借り受けた家庭が負担する予定だ。市教育委員会は、「受益者負担としなければ、費用が膨大になる恐れがある」と説明する。一方で「経済的な事情でネット環境がない家庭には、何らかの支援を講じる必要性は認識している」と話す。市は活用できる国や県の補助制度などを洗い出しているが、全て無料よりは複雑な仕組みとなり、より良い方法を模索している。

 一時的な対応としてオンライン授業をする際には、自宅にネット環境がない児童生徒が学校でも授業を受けられる体制を整える。

 浦添市は昨年度にルーター貸し出しの予算計画を立てた。だが県立学校での貸し出し状況を調べたところ、実績がほとんどないことから方針を見直した。市は「Wi―Fi環境がない児童生徒は学校に登校し、学びの保障ができるよう支援している」としている。

 足元では新型コロナの感染は落ち着きを見せているが、「第6波」が到来すれば登校の抑制とオンライン授業の活用が再び検討される可能性が高い。全ての生徒に1人1台のデジタル端末を配備する「GIGAスクール構想」や、第5世代(5G)移動通信システムの推進などもあり、新型コロナ流行に関係なくオンライン授業の導入は広がりが予想される。

 授業の形が多様化する中、市町村は学びの機会保障や費用負担のバランスに配慮した体制の構築を迫られている。

(島袋良太、吉田健一、伊佐尚記)