安里、跳馬で決勝ならず 勢い余り、着地乱す 体操世界選手権


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男子予選 安里圭亮の跳馬=北九州市立総合体育館

 体操の世界選手権第3日は20日、北九州市立総合体育館で男子予選が終了し、橋本大輝(順大)が東京五輪金メダルの個人総合で6種目合計88.040点、種目別の鉄棒で14.633点の1位通過を果たした。5位の床運動、4位のあん馬、5位の平行棒も合わせ、計5種目で決勝進出。鉄棒で2015年大会覇者の内村航平(ジョイカル)は14.300点の5位で突破した。床運動は南一輝(仙台大)が14.966点の3位、跳馬は米倉英信(徳洲会)が14.783点の4位で通過。5種目を演技した萱和磨(セントラルスポーツ)は五輪銅メダルのあん馬で14.933点の7位となり、8位の平行棒と2種目で決勝に進んだ。跳馬の北中城村出身の安里圭亮(興南高―福岡大出、三重・相好体操クラブ)は14.233点の16位にとどまり、上位8人(各国・地域最大2人)に入れずに予選落ちとなった。

 本番前から「コンディションはすごいよかった」と振り返る安里圭亮。引き締まった表情で1本目のスタート位置へ。両腕を動かしながら、跳馬に手を突くイメージを固めていく。若干の笑みも浮かべ、自信の高さがうかがえた。

 選択したのは、長らく持ち技とするD難度(演技価値点)6・0と高難度の「リ・セグァン」。一気に加速し、斜めに手を突いて宙に舞った。足を抱え込みながら前方に回転し、さらにひねってもう一度後方に回転。高さのある跳躍だったが、好調さが災いする。

 「体の反応が良すぎてコントロールが難しかった」と、跳馬向きに着地すると左後方に大きく体勢を崩した。ラインオーバーによる減点もあり、得点は9月に2連覇した全日本シニアの15・233を大きく下回る14・300。2本目のヨー2も着地を乱し、この時点で4位。後続の班の選手に次々と得点で上回られ、予選突破の条件となる8位以上に残れなかった。

 試技後、決勝に進出した場合に開発中の新技「屈身リ・セグァン」に挑むかを問われ、「今日の反応があればいける」と前向きに語っていた安里。初出場だった4年前は予選を突破して6位入賞を果たし、今回は目標をメダル獲得という高みに置いていただけに悔しい結果となった。一方で、2本目の演技直後にはスタンドにいる教え子らに笑顔で手を振る姿も。「指導している時とは別の姿を見せられてよかった」と柔らかい表情を浮かべた。 (長嶺真輝)

「先生かっこいい」 教え子、プラカードで応援
 

自作のプラカードを手に2階スタンドから応援する相好体操クラブに通う安里圭亮の教え子たち

 「がんばれ 安里先生」。三重県の相好体操クラブに通う安里圭亮の教え子8人が、跳馬横の2階スタンドで自作プラカードを持って応援した。世界最高峰の舞台でのコーチの力強い跳躍に「かっこよかった」と目を輝かせていた。

 世界トップクラスの選手のほとんどは競技に専念しているが、安里は子どもたちに体操を教えながら限られた時間で練習に取り組む。

 クラブの山本将之代表(50)は「世界大会に行くなら教えなくてもいい」と伝えているというが、本人は指導が自身の演技の精度向上にもつながるという考えから「教えたい」と継続している。熱心に後進を育成する姿に、山本代表も「素晴らしいこと」と信頼を置く。

 入場チケットの数は限られていたが、観戦希望者はクラブ内で当初約60人にも上ったという。

 中学3年の前田歩海さん(15)は「普段は優しいけど、本番は違う雰囲気でかっこよかった」とにっこり。2年の上田花瑛さん(14)も熱いエールを送っていた。