暮らし見守る灯台、満天の星空 日本最南端の有人島「波照間島」


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子
夕日に照らされ、しぶきが輝く=高那崎

 石垣港離島ターミナルをたった高速船は、石垣島の南60キロメートルの洋上に位置する波照間島に向かう。太平洋のうねりに船は激しく上下に揺れ、紺碧(こんぺき)の海をしぶきと共にぐんぐん進んでゆく。やがて港へ到着。視界には鮮やかなエメラルドグリーンの海が広がった。

 11月1日は灯台記念日。私たちは有人島で日本最南端の灯台を目指していた。「果てのうるま(サンゴ礁)」という意味から名付けられた波照間島。面積が12・5平方キロメートル、周囲が15キロメートルのだ円形の小さな島だ。レンタカーに乗り込むと早速島を一周した。

 信号機が一つも無い道を走ると、主な産業であるサトウキビ畑が続き、沿道には放し飼いのヤギがのんびりと草を食む。人慣れしたチュウサギも民家の石垣を歩き、ゆったりとした時が流れる。集落を抜け、島の中央に目的の波照間島灯台が見えた。島で一番高い標高60メートルの地に1964(昭和39)年に建てられた高さ16メートルの白い搭だ。

島のほぼ中央、標高60メートルの地にポツンと建つ波照間島灯台。海の向こうに西表島が見える=波照間島

 サトウキビを栽培する貝敷祐助さん(66)は作業の傍ら、灯台の管理業務に就く。亡くなった父・文雄さんの後を継ぎ、明かりがともるのを毎日確認する。「台風時の停電が心配。見に行かないと気になる」と話す祐助さん。「体が続く限り仕事を続ける」と気持ちがこもる。

 夕日が大海原に沈み、辺りが暗くなり始めた。灯台に明かりがともり、周囲にその存在を知らしめる。畑の中にぽつんとたたずむ白い塔は海上を行き交う船の安全をしっかりと見守り続けている。

 (文・写真、又吉康秀、写真・花城太)

満天の星 降り注ぐ

 

 島の南東端に「日本最南端の碑」が建つ景勝地・高那崎がある。太平洋に面した切り立った崖に荒波が打ち付け、しぶきが舞う。多くの観光客が訪れ、海やモニュメントを背にカメラやスマートフォンを構える。

 波照間島の魅力の一つに満天の星がある。街灯も少なく、漆黒の夜空に無数の星が瞬き、降り注いでくるかのような錯覚を覚える。12月から6月には南十字星も見え、天体観測に持ってこいの島だ。1994(平成6)年には星空観測タワーが開館し、日本最南端の碑と共に観光名所となっている。