シーズン終盤の監督解任に衝撃 FC琉球、残り8試合は喜名体制 来季は白紙


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練習の間、選手らにポジション取りなど細かに指示する樋口靖洋監督=2019年5月、金武町フットボールセンター

 FC琉球を約3年間率いた樋口靖洋監督が今季8試合を残して解任され、関係者やサポーターらに衝撃が走った。今季の全42試合中34戦を終えて15勝12敗7分の勝ち点52で現在8位。チームフロントが後継に指名したのは喜名哲裕ヘッドコーチ。県出身者として初めてのJ監督が誕生した。

■苦渋の決断

 8月28日の秋田戦での勝利後、10月16日の愛媛戦までの直近7試合で1分6敗と勝ち星がない。

 会見でFC琉球の廣﨑圭副社長は「9月の負け3試合はJ1昇格争いをしているチームにチャレンジできたし、仕方ない部分もあるが、決定的に(勝ち点を)離された。10月の負け2試合は同程度か下の順位のチームで、シュートが出ない、ゴールが出ないで勝てずだった。16日の愛媛戦の後に強化部と経営陣とで話し合い、そういう方向性になった」と、改善の兆しがない中での苦渋の決断だったと明かした。

 愛媛戦の翌日の17日、樋口氏に解任を伝え、承諾をもらい、その後、喜名氏に打診し承諾を得た。樋口氏からは、後任は喜名氏しかいないとの発言があったという。シーズン終盤での異例の監督交代。会見でチーム側は現時点で来季の監督候補は白紙であることも明言した。

■けが人続出で失速

 樋口氏はチームのJ2初年度の2019年に就任。「J2昇格組初の開幕4連勝」、2017年9月のJ3時代から続くホーム無敗記録を「30試合連続」に伸ばすなど記録を打ち立てた。19年は14位、昨年は16位だった。

 今季は2月の開幕戦で強豪の磐田を破り、5連勝と勢い付いた。全42試合の半分の21試合を終えた7月時点でもJ1昇格の条件となる2位をキープし、好調を維持し続けた。

 しかし、後半戦になるにつれ、けが人が続出。DFの要となるセンターバックの知念哲矢、右サイドバックの田中恵太も離脱し、連係プレーに陰りが見え始めた。9月の4試合は全敗し、一気に失速。課題は先制点を奪えないこと、守りを固められた場合にリズムの変化を付けられず、単調な攻撃のまま無得点に終わること。前半戦の好調を支えた堅守にもほころびが生まれ、黒星を重ねた。

■試練

 樋口氏解任にSNS上では「残念」「衝撃のニュース」「感謝しかない」「最後までやらせればいいのに」「攻撃的なサッカーもワクワクした。若い選手も育てたし、人柄も好きだった」などと惜しむ声が相次いだ。

 バトンを託された喜名氏への期待が広がっているが、大きなチャンスであると同時に試練でもある。目標に掲げた4位以内に向け「責任と覚悟を持ってトライしたい」と決意を込めた。

 けが人が続出する中で新戦力が加わるわけでもなく、チーム状況が厳しいことに変わりはない。戦術や選手起用で手腕が試される。チームのために何ができるか、選手一人一人も真価が問われている。
 (大城三太)