文化庁は5日、文化庁映画賞の優秀賞作品に選んだ「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」(原義和監督)について、6日に都内で予定していた記念上映を延期すると発表した。登場人物の遺族から事実関係に異なる部分があると抗議を受け、遺族と映画制作者との間で解決に至っていないことを踏まえたという。
映画は日本復帰前の沖縄で続いた精神障害者を隔離する「私宅監置」が題材。9月の映画賞の贈賞決定後、映画で取り上げられた男性の子に当たる遺族から、証言や解説の内容が事実と異なり「贈賞と上映会を取りやめてほしい」との連絡があった。
文化庁は延期を判断した理由として、遺族と原監督の双方が弁護士を立て協議中で「ご遺族の人権を傷つけ取り返しがつかなくなるなどの可能性がある」と説明。作品全体の評価には影響しないとして、贈賞の決定に変更はない。
遺族の一人は「私たち子への取材はなく、父をよく知らない人たちの証言でストーリーが作られている。家族にとって苦であったかのようだが、決してそうではなかった」と語った。
映画を制作した原監督は「デリケートで難しいテーマを扱う映画で見解の相違が生じるのは当然で、文化庁の対応は合理性に欠ける。私宅監置の社会的罪責の問題について解決を遠ざける決定だ」と主張した。
ことしの文化庁映画賞は大賞は該当なし。「夜明け前のうた~」を含む3作品が優秀賞に選ばれた。