【記者解説】西銘大臣、問われる真価 沖縄振興計画、開発公庫の存続が焦点


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メディア各社の合同インタビューに応じる西銘恒三郎沖縄担当相=8日、東京

 2022年度以降の沖縄振興計画について西銘恒三郎沖縄担当相は、内閣府の「基本方向」に沿って進める考えを改めて明らかにした。

 基本方向は「法的措置を講じ沖縄振興策を推進していく必要がある」と、本年度末で期限を迎える沖縄振興特別措置法に替わる新法の整備を明示し、一括交付金制度についても「継続する」と打ち出している。

 現行制度の大枠は踏襲する見込みだが、内閣府は9月の概算要求額を2998億円とし沖縄関係予算は10年ぶりに3千億円台を割り込むのが必至だ。増額が見込みにくい中で、西銘氏は予算を取り仕切る財務省との交渉に臨むことになる。

 基本方向に明記されなかった沖縄振興開発金融公庫の存廃も焦点だ。06年に制定された行政改革推進法に基づき、政府系金融機関は、日本政策金融公庫に統合される流れが進む。

 ただ、5日に上京した超党派の県議団や玉城デニー知事らが要請を繰り返すなど、存続を求める声は根強い。西銘氏は「地元の要望は極めて強い。要望、思いを受け止めて政府内の調整をしっかりする」と述べたが、存廃の明言は避けた。

 県経済に影響を与える沖縄関係税制の議論では、内閣府の基本方向で、5~10年以内での段階的「廃止」が明記された酒税と共に、揮発油税の軽減措置が俎上(そじょう)に載りそうだ。岸田政権は、菅前政権に続き温室効果ガスの排出量を2050年度に実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げる。

 この政府方針を踏まえ、政府・与党内には「石油の使用を奨励するような揮発油税の軽減措置は、政府方針と逆行する」(自民党中堅)との意見がある。西銘氏は「コロナ禍で県経済は厳しい状況にある」として来年度の税制改正による県経済への影響を避けたい意向を示したが、措置が継続されるかは不透明だ。

 現行法が期限切れを迎える来年3月までの約5カ月は、西銘氏にとって「県出身大臣」としての真価が問われる期間となりそうだ。
 (安里洋輔)