【記者解説】新たな沖縄振興 自民党主導の税制案、県の存在感薄く


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 自民党の沖縄振興調査会が19日に取りまとめた2022年度の税制改正要望案は、内閣府案を基本的に踏襲し、党税調へ提出する方針が固まった。ただ、新たな沖縄振興を見据えて県が求めた新制度の創設は議論の俎上(そじょう)にのっていない。調査会として、玉城デニー知事の意見を聴取する場も少なく、県の実情が十分に反映された要望案となっているのかは疑問符が付く。

 要望案で、自民党側が強調するのは、期間拡充を求めた「地域・特区制度」の認定基準に「従業員給与水準向上」を設けた点だ。県民の所得向上は新たな沖縄振興の重要課題で、優遇措置を受ける企業側に従業員への還元を条件付けた点は「分配重視」を掲げる岸田政権の基本方針にも沿うものだとしている。

 調査会の税制改正要望案で、特区制度などの期間が拡充されたことについて、県関係者は「一歩前進だ」と評価する。一方で、県が求めた要望が盛り込まれていないことに対しては「税調はこれから始まる。県選出国会議員の支援を得ながら、要望が通るように努めたい」とし、働き掛けを強めていく構えだ。

 同調査会は、新政権の発足、衆院選を経て執行部の顔触れが変わった。小渕優子会長は留任し、最高顧問には、官房長官や首相として沖縄政策を差配してきた菅義偉前首相が新たに就任した。新幹部の顔触れからは、新たな沖縄振興の策定を党主導で進めるという、政権の意思が強く反映されたとの見方もできる。

 一方、観光業の再興に向けて、重要視される航空機燃料税の軽減措置は「所要の措置」との表現にとどまり、12月初旬に決まる税制改正大綱で延長されるのかは不透明な状況だ。沖縄振興策の本来の趣旨である「沖縄の自立的発展」に向けて、税制議論に県の積極的な関与が求められている。
 (安里洋輔)