みんなの願いつながる「希望のダンス」 塩田千春さん展示と音楽がコラボ


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「希望のダンス」の前で演奏と舞を披露する「アンサンブル那覇」=5日、那覇市久茂地のなはーと

 【那覇】焼失した首里城の破損瓦などを用いて、美術家の塩田千春さんが制作したインスタレーション(空間芸術)作品の展覧会「いのちのかたち」が、4日から那覇市久茂地の那覇文化芸術劇場なはーとで開催されている。5日には展示とコラボレーションするコンサートが作品の前で開かれた。県立芸術大の教員ら那覇ゆかりの音楽家でつくる「ensemble naha(アンサンブル那覇)」が、塩田さんの作品に共鳴して作曲した「Recalling Red」を初披露した。

 塩田さんの作品は「いのちのかたち」「希望のダンス」「小さな記憶をつなげて」の三つ。「いのちのかたち」は「首里城のがれきに命を吹き込み、作品を見た人々の中で首里城の記憶が生き続けてほしい」と破損瓦を赤い糸でつないだ。「希望のダンス」はコロナ下で人と人のつながりを意識し、市民ら約千人から募った希望のメッセージを白いロープでつないだ。

 4日に鑑賞した谷際伊織さん(那覇小1年)もメッセージを寄せた1人。足をけがしているため「はやくみんなといっしょにはしりたい」と書いた。多くの人の願いがつながって一つの作品に昇華されたことに「すごいとしか言えない」と驚き、「作品を見て、みんなに笑顔になってもらえたらうれしい」と話した。

 5日に演奏したアンサンブル那覇は今回が旗揚げ公演となった。作曲家の土井智恵子さんが中心となり、現代音楽の発信や沖縄の伝統音楽を今日に生かす試みなどに取り組む。

 「Recalling Red」は、土井さんが「首里城の鳳凰をよみがえらせる儀式」をテーマに作曲。鳳凰の声をバイオリンやチェロなどで表現した。鳳凰に関するシェイクスピア作品をうちなーぐちに翻訳し、歌三線演奏家の山内昌也さんが唱えることで祈りの儀式を表した。舞踊家の阿嘉修さんは鳳凰の役として厳かな舞を見せた。土井さんは「作品を近くで感じながら演奏したことで、いい公演になった」と話した。

 展覧会は来年2月20日まで。
 (伊佐尚記、写真も)