議員になる「壁」こわしたい 「女性は最低5人必要」大城むつみさん、伊敷郁子さん<壁をこえて 糸満市議選から>3


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(左から)大城むつみさん、伊敷郁子さん

 糸満市議選では女性2議席を維持した。新人の大城むつみさん(64)と5期目の伊敷郁子さん(66)だ。

 大城さんの地元、座波地区は、かつて2人の市議がいたが、なり手不足で2009年以降、地域代表は1人だった。20年近くPTAや市内での読み聞かせボランティアなど、地域活動の中心を担ってきた大城さん。その姿勢が評価され、今年3月ごろ地域から市議選出馬の打診を受けた。「私たちの世代は男性を立てるように教育され、男性の世界に女性が入るのは躊躇(ちゅうちょ)する」。一方で、男性議員は一般質問で道路整備や工事関係を取り上げるが、貧困など生活に関する質疑はあまり聞こえてこないと感じていた。

 これまで経済的支援が必要な世帯に生理用ナプキンや子どもたちへの弁当を配布するなど、生活に密着した問題の解決に取り組んできた。周りからの強い要請と「女性が(議会に)入ることで少し雰囲気も変わるかな」との思いで出馬を決意した。

 1期目は、中学校の制服を地域で再利用できる仕組みづくりや、旧兼城幼稚園跡地での公立保育所設置など、子育ての環境整備に取り組む考えだ。

 引退を考えていた伊敷さん=市与座=は、後継者を探して5人の女性に声を掛けたが「家族から理解を得られない」などと断られた。「議員になること自体が壁になっている」と感じた。自身も16年前に市議選出馬の打診を受けた際「主婦ができるわけない」と一度は断った。かつての自分のように、政治に参加することをためらう様子が女性らに見られたという。選挙制度も壁になっている。1回の選挙で使う資金は約100万円。落選後の生活保障があり、非正規雇用やシングルマザーでも出られるような政党の支援が必要だと指摘する。

 子育てと議員活動の両立にも課題がある。かつて伊敷さんの子どもは地域が面倒を見てくれたが、現在は地域のつながりが希薄になり難しいと感じる。「女性議員が増えることで、子育てしながら議員活動がしやすいよう環境整備ができるのでは」と話す。

 現在、糸満市議会の男女比は19対2。男性とは異なる視点を持つ女性の声を反映させるため「最低でも5人は女性が必要」と指摘し、女性議員の割当枠を設ける「クオータ制」の導入が必要だと考えている。「あなたの困り事はみんなのものだから、一緒に壁を壊していこう」。伊敷さんはそう呼び掛け、自身が教えられるうちに後継者を育てたいと強く望んだ。
 (比嘉璃子)


 来年は統一地方選がある。本連載では11月の糸満市議選を例に、多様な社会を議会に反映させるため、育児や仕事を抱える若者や女性が出馬しやすい環境について考える。