米軍機の燃料タンクを改造「タンク舟」 沖縄の歴史語る史料に 美ら島財団などが調査


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タンク舟について、所有者の真謝孝金さん(左)から使用法などを聞き取る板井英伸さん(右)と飯田卓准教授=11月15日、名護市内

 【北部】沖縄美ら島財団と国立民族学博物館(大阪府)は、沖縄伝統のサバニや、サバニの代用品として戦後使われた「タンク舟」の歴史や建造技術を記録する共同調査を実施している。11月15日は名護市と本部町でタンク舟の所有者ら9人を訪ね、使用法などを聞き取った。

 沖縄美ら島財団による過去の調査で、サバニの建造技術や伝統的な船体が消滅の危機にあることが分かっている。

 タンク舟は、廃棄された米軍機の燃料タンクを沖縄の住民が船に造り替えたもので、物資不足だった戦後の暮らしを支えた。本島北部に多く残されている。

 名護市宇茂佐の真謝孝金さん(65)方では、沖縄美ら島財団総合研究センターの板井英伸さんと国立民族学博物館の飯田卓准教授が、真謝さん所有のタンク舟を観察した。全長3.46メートル、幅66センチで一般的なタンク舟より小ぶりという。

 真謝さんは「昔は皆タンク舟を持っていた。大人たちが仕事の後、名護湾の浅瀬にこぎ出しイカ釣りを楽しんだ。港にタンク舟が並んでいたから子どもも勝手に乗った」と振り返った。

 飯田准教授は「沖縄戦があったからタンク舟が生まれた。手に入る物資で多くの人が作るようになった。戦後の沖縄独特の船で、時代を語る史料だ」と指摘。板井さんは「ジェラルミン製で、こんな小さい船は世界的にも珍しい。燃料タンクを使おうと思った発想が面白い」と語った。12月はサバニを調査している。
 (岩切美穂)