【識者談話】「基地前に廃棄物」宮城さんへの安易な起訴、表現の自由侵害(高作正博・関西大教授)


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 宮城秋乃さんが伝えたい意図とかけ離れたところで、警察と検察が動くことに大きな危惧を抱く。政治的な問題が関わる事案では、検察が安易に起訴するケースがあり、目に余る。今回の起訴は警察や検察の信頼を損なうのではないか。検察はどういう判断で起訴に至ったのか説明してもらいたい。

 警察や検察はおそらく、何もしないで放置すれば、他の市民も同じことを繰り返すと考えたのではないか。だが、表現をどう受け止めるのかは警察や検察の役割ではない。宮城さんが伝える廃棄物問題は政治主導で解決する必要がある。

 検察は威力業務妨害と道交法違反のみで、廃棄物処理法違反では起訴しなかった。もともと廃棄物を適正に処理していなかったのは米軍であり、返還後は日本政府の役割だ。その責任が露呈するから起訴しなかったのかもしれない。

 宮城さんは物を置くという行為の事実を認めているが、威力業務妨害の構成要件に当たらないと主張しているという。一般に「威力」とは人の意思を圧迫するに足る有形無形の勢力を意味する。この点から、物を置く行為は威力に該当しないと考えているのだと思う。

 市民が逮捕、取り調べを受けて起訴されれば恐怖を感じる。最後まで有罪かどうか分からない不安に置かれるならば、表現しない方がいいと萎縮しかねない。表現の自由への侵害につながる。警察や検察は影響の大きさを自覚してほしい。
 (憲法学)