ひとり親世帯がウェブデザイン学ぶ「MOM For STAR」 生活の悩みも仲間と解決


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お菓子やアロマオイルでくつろぎながら談笑する(左から)知念由希野さん、金城慎希さん、山川伸夫さん=2021年12月8日、沖縄市内の事務所

 所得レベルの低さ、賃金の男女格差、進む核家族化。さまざまな地域課題のしわ寄せを受けるのがシングルマザー世帯だ。

 低所得に悩むママたちが沖縄県内で子育てをしながら、全国的に人手不足が著しいウェブデザインを学び、東京並みの所得を目指してスキルアップし、生活上の悩みも仲間と解決していく。2021年4月に始まった“一石三鳥”のプロジェクト「MOM For STAR(マム フォー スター)」は10月、活動の意義が評価され、グッドデザイン賞を受賞した。

 手掛けたのは、レキサス(うるま市、比屋根隆社長)、フォーデジット(東京都、蛭田正司代表取締役、田口亮代表取締役CEO)のデジタルデザイン2社と、ひとり親世帯を支援する当事者団体・しんぐるまざあずふぉーらむ沖縄(秋吉晴子代表)。オリオンビール奨学財団(豊見城市)が実施する助成事業を活用し、レキサスがママたちを雇用し、フォーデジットが研修を実施して仕事を依頼する。仕事や生活の悩みはふぉーらむが受け皿になる。

 12月、ママたちが内装を手掛けた手作りの沖縄市内の事務所で、半年前にはパソコン操作がおぼつかなかった知念由希野さん(38)がプログラム言語を駆使して企業ホームページを見栄え良く更新していた。

 培われたのはITスキルだけではない。これまでの職場では子どもが体調を崩しても休みづらく「悪化して入院したこともあった」と金城慎希さん(23)。事情を理解する仲間に囲まれて早めの受診も可能になり「できる時にもっと頑張ろうと思える」と安心感がやる気を後押しする。

 ママたちと話し合いながら進めてきたレキサスの山川伸夫さんは「互いに補い合うチームとしてさらに成長しそうだ」と目を細めた。

 (黒田華)


 メモ 2020年にしんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄が行った沖縄県内のひとり親調査では、回答者の約6割が非正規雇用で、約9割が低所得者が対象の児童扶養手当を受けていた。約9割は母子のみで暮らし「コロナに感染したら子どもを見る人がいない」との回答もあった。