<琉球料理は沖縄の宝 安次富順子>12 サンゴ礁は海の畑…昆布,多様な結び方


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 琉球料理は豚に始まり豚に終わると表現されます。海に囲まれているにもかかわらず、魚介類の料理はあまり発達していません。しかし、島を取り巻くイノー(サンゴ礁に囲まれた穏やかな海)は、「海の畑」ともいわれ、小魚や貝、海藻などの海の幸に恵まれ、人々の生活を支えてきました。現在は、漁業も発達し捕れる魚介類は多種多様です。また、沖縄では採れない昆布が非常によく食べられてきました。

グルクンのから揚げ

<魚・海藻類の食材>

魚介類の料理

ミーバイのマース煮

 肉食文化、油脂文化、アジクーターといわれる濃厚な味わいを好む文化が発達し、魚の淡白な味はあまり好まれなかったものと思われます。また、気候の関係で鮮度を保つのが難しかったこと、生ものを食べる習慣がなかったこと、にぎり寿司文化がなかったことなども影響しているものと思われます。

 現在は、県魚のグルクン(タカサゴ)をはじめ、沖縄の3大高級魚とされるアカジンミーバイ(スジアラ)、マクブ(シロクラベラ)、アカマチ(ハマダイ)のほか、タマン(ハマフエフキ)、クチナジ(イソフエフキ)、アバサー(ハリセンボン)、マグロなど多種類の魚が食べられています。

 グルクンは、白身で淡白なので油との相性が良く、さばかずにそのままパリパリに揚げる空揚げが有名です。また、グルクンの身は粘りが強いので、もちっとした食感の美味しいかまぼこが出来上がります。

 マグロは漁場が比較的近いという条件にあり、ほとんどのマグロが冷凍されることもなくチルドの状態で市場に運ばれるので、「生鮮マグロ」といわれています。沖縄は全国有数の生鮮マグロの産地で、鮮度が高く、特に年間通じて旬のマグロが味わえるのが特徴です。ちなみに那覇市の市魚はマグロです。

 現在はいろいろな魚が、刺身、寿司ネタ、魚汁、マース(塩)煮、煮つけ、揚げ物、かまぼこ、焼き物などとして食されています。

 魚のほかに、大きな体のセーイカ(ソデイカ)、花いかなどに使われるクブシミ(甲イカ)、イカ墨汁の白イカ(アオリイカ)、とびイカ、また伊勢エビ、養殖の車エビや、ウニ、貝類、イラブーなどの料理も食されています。

 2018~20年の統計局の家計調査年報(都市別統計で那覇市のデータ)によると生鮮魚介の消費量は全国最下位で、マグロと刺し身の盛り合わせが13位という程度です。個別の魚介類もほとんど最下位に近いのですが、魚缶詰は全国1位、かつお節は全国平均の約4倍の消費量で全国1位です。

海藻類

 

モーイ豆腐

 スヌイ(もずく)、海ぶどう(クビレズタ)、アーサ(一重草)、モーイ(いばらのり)、スーナ(おごのり)などがあります。スヌイは1970年代に養殖技術が確立して以来、ほとんどが養殖で全国の収穫量の99パーセントを占めています。スヌイにはコレステロールや血圧を低下させ、がんなどの予防に良いとされるフコイダンや食物繊維が豊富です。酢の物として食べられていますが、てんぷら、汁物、よせ物、丼、雑炊、ようかんなど食べ方の工夫も盛んです。

 海ぶどうは独特のプチプチ感を持ち、2005年ごろから陸上での養殖が盛んになり、広く出回るようになりました。アーサは淡い緑色と磯の香りに加え柔らかな口当たりが特徴で、汁物、酢の物、てんぷらなどに用いられます。1985年ごろから養殖が始められております。モーイ・スーナはともに寒天質を含んでいるので煮溶かして固めてモーイ豆腐、スーナ豆腐として、また春先には生のものが酢の物として食べられています。

昆布

 

 沖縄では採れない昆布が沖縄でよく食べられています。17世紀に薩摩が琉球を支配していた頃、薩摩藩が財政立て直しのため、中国との交易に昆布を使い、琉球が昆布の中継地となりました。そのため昆布が身近に置かれ、昆布食が定着しました。

 昆布と豚肉は相性が良く、淡白な昆布に肉の動物性のうま味と油脂が加わり、おいしさが増します。昆布は、血圧や血中コレステロールを低下させ、豊富な食物繊維が便秘や大腸がんの予防になります。

 沖縄で使われる昆布は、主に長昆布で、水で戻した後軟らかく煮て野菜感覚で食べます。昆布は各種行事で作られる重箱料理にも欠かせない品です。また、用途に応じて調え方も違いがあり、普通の食事やお祝いには結び昆布、花結び、夫婦結びを、また法事には返し昆布などという調え方もあります。

 このように、昆布の扱い方もいろいろあり、昆布が、いかに生活に浸透しているのかが分かります。

 昆布の使用量は、家計年報(総務省統計局)によると昭和の時代の1980年には1500グラムで全国一でしたが、2018~20年には326グラムで11位です。よく食べていた頃の約5分の1に激減しています。

 (琉球料理保存協会理事長)
 


 安次富順子(あしとみ・じゅんこ)

 那覇高校、女子栄養大学家政学部卒。1966年~2016年まで新島料理学院、沖縄調理師専門学校(校長)勤務。沖縄伝統ブクブクー茶保存会会長。主な著書に「ブクブクー茶」「琉球王朝の料理と食文化」「琉球菓子」など。


~~ウチャワキ~~

沖縄の寿司文化

 日本各地に名物寿司がありますが、昔の沖縄には寿司文化は根付きませんでした。ただ唯一、大東島に伝わる大東寿司が存在します。大東寿司は、醤油、酢、砂糖、酒をベースにしたタレにマグロやカジキなどの魚を漬け込み、すし飯で握ったものです。

 ルーツは八丈島から移り住んだ人たちが伝えたといわれています。復帰の前後くらいから握り寿司も一般化していきましたが、今では多くの寿司店があり、スーパー、コンビニなどでも売られる人気料理の一つです。