眠る沖縄関係史料掘り起こす 東恩納寛惇賞を受賞した我部政男さん


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史料収集の大切さや、歴史研究への思いなどについて語る我部政男さん=那覇市泉崎の琉球新報社(ジャン松元撮影)

 沖縄史料の基盤づくりや沖縄近現代史の研究などが評価され、第39回東恩納寛惇賞に決まった日本近代史研究者の我部政男さん(83)。「最初の受賞者が(沖縄の言語研究などで業績を残した)仲宗根政善先生である東恩納寛惇賞の末席に名を連ねることは大変光栄なことだ」と感慨深く受け止めた。

 1939年、本部町生まれ。本部中、名護高、琉球大などを経て東京教育大大学院へ進み、日本近現代史を研究した。

 明治国家と沖縄の関係などについて研究を深めるとともに、史料の収集・整理にも力を入れてきた。琉球・沖縄史研究では、琉球処分(琉球併合)や沖縄戦の影響で残されている史料が少なく大きな課題となっている。

 数が少ないからこそ、眠っている史料を探す重要性を実感し、収集に取り組んだ。例えば、浦添市教育委員会が1987年度から約15年かけて取り組んだ「琉球王国評定所文書」の刊行にも、他の研究者や行政と協力し取り組んだ。同文書は琉球併合後に東京で保管中、関東大震災で焼失した貴重な史料。史料の一部が警察庁の地下倉庫などにあることを確認し、刊行へとつなげた。

 「みんなが共有して見ることができるシステムを作ることができたらいいと思い、取り組んできた。史料を通してその人間たちの生きざまに迫ることができる」と語る。

 今後へ向けて「写真史料を中心に集めていきたい。沖縄戦の時に米軍の各部隊が撮影したものがある。これからも仲宗根先生たちの業績に近づけるように努力したい」と意欲を見せた。

(古堅一樹)