安易な「台湾有事論」識者の見解は 勢いづく「核共有」、ウクライナ侵攻と関連づけ


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 自民党内でにわかに勢いづく核共有などの発言は、「ロシアのウクライナ侵攻と連動して中国が台湾に侵攻する」といった見立てとセットになっている。だが、ロシアの軍事侵攻を台湾有事と関連付ける向きに対し、国際関係の研究者の間では懐疑的な見解が強い。

 野添文彬沖縄国際大准教授(国際政治学)は「(ウクライナ侵攻での)ロシア軍の苦戦もあり、中国は教訓としてみているだろう。中国は軍事力による台湾統一は諦めないとしても、陸続きでない侵攻の難しさは認識していると思う」と安易な関連付けに疑問を呈する。

 核武装論など改憲・防衛強化につながる主張は自民党内での旧来の議論であり、危機に便乗して持論の拡大を図っているとの見方もある。佐藤学沖縄国際大教授(政治学)は、安倍氏らの発言のタイミングを「国民に中国脅威論がまん延する中、防衛力強化が受け入れられるという判断があるのだろう」とみる。

 佐藤氏は「平和的解決を『理想主義』と批判する向きもあるが、『ミサイルを持てば日本を守れる』という主張の方がよほど夢想的だ」と、軍事衝突を回避する外交努力の重要性を強調した。
 (塚崎昇平)