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キャリア「無理しなくていいよ」は配慮? 女性が挑戦できる声掛けを<伊是名夏子 100センチの視界から>118


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
娘とおそろいのスカートでおでかけです

 前回のコラムで、女性が長期的に働けないのは、子育てがしにくい社会構造などに問題があると書いたのですが、大きな点を見落としていたと気づきました。

 ソニー生命の2020年の調べでは、日本の女性は年齢を重ねるごとに、キャリアを積みたいと思う割合が減り、20代で約40%だったのが、40代は約33%、50代は25%を切ります。社会全体として、仕事においては女性には期待をしない、頑張らなくてもいいよ、と考える傾向があるからではないでしょうか。無理をしなくていいよ、と言うのは、配慮のように見えて、チャレンジする機会を奪い、あきらめさせることにつながることがあります。機会を与えない配慮ではなく、失敗した時や困った時にサポートすること、「失敗してもいいよ、助けてあげるから」という声掛けがあれば、あきらめることなく、キャリアを積み重ねることができるでしょう。

 この状況は障害のある人が抱えているものと通じると感じました。障害があるからできなくてもいいよ、無理はなしくてもいいよ、と言われ続けることで、学ぶ機会や、就職する機会、ときには外出する機会すら奪われることがあるからです。経験もモチベーションも下がり、あきらめることが習慣になります。

 「障害があってもできるよ、できないときはサポートするよ」と声を掛け続けてもらったら、挑戦をし、経験を積み重ね、希望を声にすることができると思うのです。

 「The Center for Work―Life Policy. 2011」によると、大卒の日本女性は、米国と比べて、仕事への不満や、行き詰まり感から離職するのが多く、一方米国では日本よりも多くの女性が育児や介護が理由で仕事を辞めるというデータもあります。

 日本の女性の頑張りが足りない、制度が不十分なのではなく、やりがいが低く、長期的な希望を感じられない仕事しか女性に与えないことが、離職につながっているのではないでしょうか。

 だからこそ女性が働き続けたいと思えるような声掛け、サポート、そして昇進のチャンスが何度も必要です。女性だけに特別に与えるのは不公平だと思う男性もいるでしょう。しかし社会構造の中で女性は不利な側に居続け、あきらめることが習慣化しています。公平になれる方法を一緒に模索し、みんなが幸せな社会を作りましょう。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。