目指せ英語立県沖縄 東進・安河内氏、沖国大・ドライスタット氏が講演


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 「英語教育を考えるフォーラム」(主催・沖縄の英語教育を考える会、共催・琉球新報社)が3月26日、オンラインで開催された。本フォーラムは、産学官が連携して推進する「英語立県沖縄」の趣旨に沿い、英語教育者の支援を目的に開かれた。13回目となる今回は、東進ビジネススクール・東進ハイスクール講師の安河内哲也氏と沖縄国際大学准教授のダグラス・ドライスタット氏が講演した。両氏の講演内容を紹介する。


「頭と口が動く授業」へ 安河内哲也氏(東進ビジネススクール講師)

安河内 哲也氏

 英語教育の在り方は、地球規模で進化している。AIが発達し、スマートフォン一つでどんな情報も手に入る現代において、人間の脳は単なる記憶装置ではなくなり、雑多な情報を組み合わせて新しいアイデアを創造する力が求められるようになった。また、現代の英語は今や世界共通の言語であり、国や地域を超えたコミュニケーションの手段として広く使われている。その意味で学校などの教室は、リアルな人間が集まり、コミュニケーションを取り合える貴重な場所である。従来の知識伝達型から生徒同士をつなげる活動中心型へ、授業形態も移行すべきだろう。

 私が指導改革に携わった学校では、就任後6年間で、高校3年時の英語検定2級取得率は9.9%から67.9%に、入学志願者数も5倍に増えた例がある。成功の理由には、音声を使って英語を学べる環境の整備、ICTの活用などいくつか要因があるが、最も重要なのは教員ではなく「生徒の頭と口が動く授業」の実践である。沖縄の学校にたびたび呼ばれて授業を行った感触では、活動型授業との相性が総じてよく、アクティブイングリッシュに最高の環境だと思っている。

 指導者を含めたこれからの英語学習方法にも触れておきたい。最近強く主張しているのは、聞いて理解できる内容は読んでも当然理解できるのだから、目標として「耳で仕上げる」という発想を持つこと。そしてスピーキング力を高めるには、「いつか」と言わず「今」の英語力で勝負して、PDCA(計画→実施→検証→改善)サイクルを回すしかない。特に教員は勇敢な学習者のモデルとして、生徒の前で話す姿を見せることが重要である。毎日5分程度のオンライン英会話を続けて、習慣化を図るのもいいだろう。


ネット さらなる活用を ダグラス・ドライスタット氏(沖縄国際大准教授)

ダグラス・ドライスタット氏

 コロナ後の在宅勤務に関するアメリカの調査を見ると「生産性が上がった」ことを示すデータが多数報告されている。これはパンデミック(世界的大流行)後もリモートワークが続くことを意味しており、今後の教育現場ではそうした社会変化に対応できる人材の育成が必要になる。

 しかし実際の学校の授業では、教員がEメールで生徒に課題を与え、Eメールで提出させて採点・評価するだけのケースも散見される。これが遠隔教育と言えるかどうかは疑わしい。

 歴史上、eラーニングは失敗の連続だった。ラジオ、テレビが発明されるたびに「教師や教科書は不要になる」と言われたが、従来の教育方法を代替するには至らなかった。

 こうした歴史を覆しつつあるのがインターネットである。近年は便利な教育プログラムが続々と誕生し、例えば生徒たちから意見を募ったり、多数決を取ったりしたければ、専用のアンケートサイトを利用すれば簡単に解決するし、教員と生徒で学習成果を共有できる高機能の単語学習サイトもある。

 LMSと呼ばれる学習管理システムも急速に普及しており、出欠席・課題の提示と提出・ディスカッションといったやり取りがシステム上で完結し、さらなる活用方法が議論されている。