復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉4月13日「米国まかせの核抜き」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年4月13日の琉球新報1面トップは、「山中長官、久米島虐殺事件で答弁/実態掌握のうえ措置/深く心えぐられた/上原氏、証人の喚問を要求」との見出しで、久米島の住民虐殺事件を巡り政府の姿勢について国会で審議された様子を報じている。記事では山中貞則総務庁長官の答弁として「久米島事件は同胞の中における問題として深く心をえぐられた気持ちがしている。当時の指揮官が現在いて反省の色が見えない、テレビ、新聞記事でも反省していない。(中略)久米島事件は終戦の年の八月二十日までも続いた。ほかにもそういうことがあり得ると思われるので実態調査をまず行う。国もなんらかの責めを負わなければならないだろうと思っており、実態を掌握して措置をしたい」と紹介している。

 復帰に伴い沖縄からの核兵器の撤去について「米国まかせの核抜き/政府答弁、情報を持っていません」との見出しで、国会での質疑を取り上げている。記事では、社会党の木原実氏が沖縄からの核撤去の確認を求めたのに対し、吉野文六外務省アメリカ局長が「アメリカは一切われわれは知らせる立場にないといっているし、われわれとしても何も情報をもっていない」との答弁を紹介し、「〝核抜き〟保証はすべてアメリカまかせであると従来の政府見解を繰り返した」と記している。

 さらに「尖閣を防空識別圏に」と、久保防衛庁防衛局長が復帰後の沖縄における防空識別圏の設定について国会で答弁した内容を報じている。久保局長は「尖閣列島は識別県内に入れるが、舟山列島に沿った線は中国に近いので検討の余地がある」と述べていた。

 沖縄返還密約のやりとりが記された外務省の極秘電報が国会で公にされ、新聞記者が逮捕されたた件について連日報道されている。この日は「報道の自由/『時代に逆行』で追求/衆院、きょう連合審査で論戦」と、野党側が復帰に伴う米軍基地の復元補償に関する政府の従来答弁の矛盾などを指摘している様子を報じている。さらには「復元補償でただす」と衆院内閣委員会での審議を紹介。記者を逮捕した警視庁捜査2課の取り調べに関連して、記者から受けた極秘電報を基に国会で追及した社会党の横路孝弘衆院議員への事情聴取を警視庁が求めていることについて「国政調査権への干渉/社党/横路議員の調べを拒否」と社会党が拒否したとの記事を掲載している。

 

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。