「疲れた。転職を何度も考えた」学校で孤立する養護教諭 コロナ下で業務負担増、助言も「行事優先派」から軽視


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新型コロナに感染した生徒らの名簿の一部。感染拡大防止のため、一人一人の行動履歴や保護者らへの連絡日時などが細かく記入されている=3月16日、本島内の中学校

 4月、県内で再び新型コロナウイルスの感染が拡大している。学校では養護教諭の業務負担感が増している。学校行事前は、開催を優先する管理職や教職員、保護者らに助言を軽視されることが増え、養護教諭が校内で孤立化するケースもみられる。

 「疲れた。もう転職しようかなって何度も考えた」。3月16日の放課後、本島内の中学校の保健室で、養護教諭の女性はぼーっとした目でここ数カ月を振り返った。「子どもが好きだから、4月からは気持ちを切り替えてまた頑張る」と笑ってみせたが、表情には不安が色濃く残っていた。

 コロナ下で養護教諭の新たな負担となった一つに、学校PCR事業がある。県は「持続的に続けるため、教職員の負担にならない形で実施する」として、2021年9月末から事業を業者委託した。検体を検査機関へ搬出することなどいくつかの業務は軽減されたが、児童生徒への聞き取りが必要な接触者リストの作成などは引き続き学校が担っている。

 養護教諭の女性によると、ほとんどの学校で養護教諭がリスト作成要員になっている。リスト作成後は付随する業務が続く。手元にあるファイルには、感染した生徒らの名簿があり、一人一人の行動履歴や感染日、保護者に連絡を取った日時や登校再開日など、細かく記してある。「感染拡大を防ぐために必要な作業。でも限界がある」。養護教諭の配置数は児童生徒数に応じて決まるが「コロナで負担が増える分、サポート要員を配置するなど公的な支援をしてほしい」と訴える。

 運動会や修学旅行などの学校行事前は特に憂鬱(ゆううつ)になるという。行事の開催規模や方法に懸念を示すたび「みんな楽しみにしているのに」「そこまで心配する必要はあるのか」と、いつもは頼りにされている専門的な助言が何度も軽視された。「子どもを思う気持ちは同じで、何も学校行事をつぶしたいわけじゃない」

 元中学校校長の男性は「コロナがきっかけで、多くの養護教諭が孤立してしまったように感じる。無力感を覚える人が増えたのではないか」と話す。相談も増えたという。

 3月末、県内小中学校では養護教諭の早期退職者と、自己都合などによる普通退職者が前年度(1人)より9人増えた。県教育委員会は個別の理由を把握しておらず、増加の背景は不明。女性養護教諭は「コロナがいつ落ち着くのか全く分からない。学校PCR検査事業を完全業務委託したり、学校行事は自治体や県で開催方法を統一したりするなどしてほしい」と訴えた。
 (嘉数陽)