ママをもっと笑顔に イベント「ゆるり」、県内各地で140回以上開催 子育てや社会進出を支援


社会
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 ハンドメイド雑貨や飲食店、ネイルに整体、ベビーマッサージ体験会など多種多様な出店が並ぶイベント「ゆるり」。出店者も来場者も、ほとんどが子どもを連れた母親だ。2015年から始まり、これまで県内各地で140回以上開催されてきた。

「ママたちが幸せになる支援が必要だ」と話すまままーる協会代表の真喜志リエさん(左)と夫の康一さん=3月、嘉手納町

 運営するまままーる協会代表の真喜志リエさん(41)=読谷村=は、「ゆるりはママたちの子育て支援や社会進出が目的。ここに来ていろんな人と会ったり、好きなことをして楽しんだりしてほしい。ママが笑顔だと子どもも笑顔になる」と思いを語る。

きっかけは疎外感

 開催のきっかけは、真喜志さん自身が妊娠中に職場を解雇されたり、社会からの疎外感や孤独感を感じながら育児をしたりした経験だ。

 解雇されたのは、当時2歳だった長男を育てながら、高齢者施設で介護福祉士としてフルタイムで働いていた頃。長女を妊娠していることが分かり、つわりなど体調不良で休みがちになった。以前のように働けない申し訳なさを抱えながら仕事を続けたが、親の不調を感じ取ったかのように、長男も徐々に精神的に不安定になっていった。

 そのさなか、職場から自己都合退職を勧められた。「自己都合」にされるのは納得がいかず、交渉の結果「解雇」されて仕事を離れた。「妊娠を理由に仕事を辞めさせようとするのも、解雇するのもおかしい。『このままの社会じゃだめだ』と感じた出来事だった」と振り返る。

 長女が生まれ少し気持ちに余裕ができはじめた頃、周囲から「○○さんの奥さん」「○○ちゃんのママ」としか呼ばれなくなっている自分に違和感を抱くようになった。「自分自身はどこにいるんだろう。何がしたいんだろう」―。自問自答を繰り返した。

 考えた末、長男を出産後に取得していたベビーマッサージの資格を生かして、単発で教室を開くようになった。そこでさまざまな資格や特技を持つ母親たちとつながりができた。「ママたちはエネルギーがある。全部一度に集まったら楽しそうかも」。わくわくした気持ちが「ゆるり」開催へと駆り立てた。

母親らが特技や資格を生かして活動できるイベント「ゆるり」の様子(まままーる協会提供)

没頭できる空間

 現在「ゆるり」は県内の複数カ所で毎月1回以上開催している。無料の一時託児スペースも用意し、母親たちが子どもを気にせず、自分のやりたいことに集中できる環境を作る。真喜志さんは「暗い顔をして来場したママが、笑顔になって帰っていく姿を見るとやりがいを感じる」と語る。

 グラフィック・ウェブデザイナーとして活動しながら運営に携わる夫の康一さん(47)は「最初は『女性の園』という感じで入りにくかった」と笑う。だが、最近は会場に男性が増えてきているという。「パパが子どもと遊んでいる姿もよく見る。時代の変化を感じる」と話した。

 18年に同協会は法人化し、ベビー&キッズシッターサービスや企業と母親をつなぐトライアル求人マッチングサービスなどを手掛けるようになった。今後もさまざまな支援の在り方を探していく予定だ。

 真喜志さんは「ママたちが幸せになるための支援がもっと必要だ。ママたちに寄り添い、一人でも多くの人を救いたい」と意欲を語った。

 次回の「ゆるり」は19~21日、うるま市のサンエー具志川メインシティで。午前10時から午後4時まで、入場無料。

 問い合わせは同会(電話)050(5328)0801。
 (嶋岡すみれ)