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選択肢こそが幸せに<伊是名夏子 100センチの視界から>120


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「娘が小学校に入学しました」

 新年度を迎え、ワクワクしながらも、落ち着かない毎日でしょうか? 沖縄では学校の教員数が不足し、担任が決まらないクラスもあると聞きました。特別支援学級が増え必要な数が増えただけでなく、労働条件が厳しく無理を重ねた教員が休まざるを得なかったり、教員になりたい人が減っていたりすることが原因でしょう。保育士不足と共通する部分があります。若い人が幸せなこと、大切にされることが社会全体の幸せにつながると思うのですが、若い人を支える土台が崩壊しそうなことに、悲しみと危機感がこみ上げてきます。

 不登校も珍しくなくなり、子どもの特性に応じた学びを保障しようとする動きもありますが、それを担う人がいないのは致命的です。なんでもこなせるマルチな教員だけが働き続けられるのではなく、それぞれの先生のライフスタイルや、特徴を生かした働き方ができるようになってほしいです。学校の枠組みそのものを変えないと難しいのかもしれませんが、このままでは子どもの学ぶ権利が保障できません。

 2018年に神戸大学と同志社大学が行った調査では、幸福感に与える影響力は、所得や学歴よりも「自己決定」という結果が出ました。選択肢があって、自分で選べることが幸せにつながるのです。選択肢を一つ増やすことが、幸せにつながるのです。子どもたちにもいろいろな場面で選択できることを願いますし、それは子どもを支える人たちもです。

 雨が降ったら傘をさす、カッパを着る、雨靴を履く、といろいろな選択肢があり、時には雨がやむまで待つ時もあるでしょう。また傘一つをとっても、軽い傘、丈夫な傘、晴雨兼用などいろいろあります。選択肢があるからこそ、壁を乗り越えられたり、困難さと付き合ったりすることができます。雨への対処法と、働き方を単純に比べることはできませんが、選択肢こそが幸せにつながることを心に留めたいです。

 そして大切なのが、自分が頑張りすぎないことです。周りのことを思って頑張りすぎると、頑張っていない人が許せなくなったり、他の選択肢を認められなくなる時があるからです。自分の困ったこと、つらいことを我慢するのではなく、自分こそ助けを求めていきませんか。コロナ禍もあり、社会全体がさらに厳しい今、個人で解決できないことは多いですが、あなたが倒れないこと、サポートを得られることを願います。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。