【記者解説】国際法上の権利を認めず アイヌ遺骨巡る状況と落差


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判決を前に裁判所に入る原告団、弁護団ら=21日、京都市の京都地裁前

 琉球遺骨返還請求訴訟で京都地裁が原告の訴えを棄却した背景には、先住民族の権利を守る法整備が国内で進んでいないことがある。また政府は沖縄の人々を先住民族と認めていない。この点で旧帝国大学から遺骨を返還させているアイヌ民族を巡る状況との違いがある。

 アイヌ遺骨の返還を求める訴訟で北海道大学などは和解に応じ、遺骨を受け皿団体に返還した。遺骨返還を求める権利は「先住民族の権利に関する国連宣言」で認められている。民法は「祭祀(さいし)承継者」でない人への遺骨返還を認めないが、アイヌ民族が古くからコタン(集落)で墓地を管理した事情も考慮され、個人にとどまらず地域(受け皿団体)への返還が実現した。

 琉球の人々が先住民族であることは国連がたびたび勧告しているが、政府はアイヌ民族以外に「先住民族はいない」との立場だ。

 今回の判決が「関係諸機関を交えた協議によって解決に向けて環境整備が図られるべきだ」と付け加えた背景には、アイヌ遺骨を巡る状況との落差があると考えられる。

 国際法で認められた遺骨返還の権利が、沖縄の人々には認められない状況がある。国はアイヌ民族と同様に旧帝国大学に沖縄から持ち去られた遺骨がどれだけ存在するのかを調査し、返還を協議する仕組みを設ける必要がある。
 (宮城隆尋)