那覇みらい支援学校が4月、那覇市古波蔵に開校した。7日に開かれた開校式には児童生徒や保護者らが参加し、新しい校舎での生活をスタートさせた。同校設立を巡っては盲、ろう、特別支援学校の児童生徒の保護者らでつくる県特別支援学校PTA協議会が、知的障がいのある児童生徒が通える特別支援学校を市内に設置するよう長年求めてきた経緯がある。同協議会の会長を務めた照屋尚子さん(56)=同市=は「地域に開かれ、保護者同士もつながる学校になってほしい」と願う。
那覇みらい支援学校の開校以前は、那覇市内の特別支援学校は肢体不自由を対象にする那覇特別支援学校だけだった。市内に住む知的障がいのある児童生徒は、市外の学校に通う必要があった。
■保護者の団結
「負担が大きい障がいのある子どもたちが、毎日バスなどで市外に長距離通学をしなければならないのが現状だ」。2006年、県教育庁を訪れた同協議会の保護者らはそう訴え、市内への特別支援学校設置などを要請した。その後も毎年要請を続け、15年には2万筆を超える署名が集まるなど、学校新設を求める声は広がりを見せた。
保護者らの長年の訴えを受け、県は16年2月、那覇市古波蔵に県立特別支援学校を新設する方針を固めた。12年から2年間、同協議会会長を務めた照屋さんは「『自分の子どもは通えなくても、これからの子どもたちのために動きたい』。そんな熱い思いを持つ保護者が一致団結した。感謝しかない」と振り返る。
■負担大きい通学
自身も知的障がいと自閉症のある長男(27)を育ててきた。那覇市内から糸満市の西崎特別支援学校に通った。スクールバスで片道1時間ほどを要した。
15年当時、特別支援学校4校(大平、島尻、西崎、鏡が丘)におけるスクールバスの最大運行時間は、75~105分。児童生徒がバスに長時間乗車しなければならない実態があった。感覚過敏のある長男は、長時間のバス乗車で靴下や靴をはき続けることが難しく、はだしでバス停に降りたこともあった。バス内でパニックになった児童に顔を引っかかれたこともある。「通学の負担は大きく、本人にとっても苦痛の時間だったと思う」と語る。
子どもの体調不良で早退が必要になることもあるが、車を持っていない保護者もいた。那覇市内から糸満市にある学校までタクシーで往復するなど、経済的な負担もあったという。
市外の学校に通っていたことで「地域で息子を育てている感覚があまりなかった」。地域内で周囲と交流を持ちながら子育てをする重要性を感じていた。
■交流ある学校に
那覇みらい支援学校の敷地内には、地上4階建ての校舎棟や屋内運動場・プール棟、屋外施設などが整備された。外部の音を遮り、子どもたちが気持ちを落ち着けるための「カームダウン・クールダウンスペース」も設置され、「児童生徒のために工夫された設備だ」と歓迎する。
最近では放課後等デイサービスの充実などで、仕事をしながら子育てをする保護者も増えてきた。だからこそ、保護者同士がつながる学校・PTA行事の役割は増していると考える。「地域に開かれた学校として、他校とも積極的に交流を重ねてほしい」。今後進学する子どもたちがよりよい環境で過ごせるよう期待を込めた。
(吉田早希)