与野党、全会一致へ譲歩 基地問題で難航、思惑交錯も<単眼複眼>


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沖縄県議会

 沖縄の日本復帰50年に当たっての県議会としての意思表明に当たる意見書・決議案がまとまり、13日の臨時会で全会一致で可決されることになった。文案調整は基地問題の扱いを巡り与野党で難航したが、全会一致に向けて双方が歩み寄った。県議会の全会一致の「重み」を、県政与党は基地問題を中心とした諸課題の発信に、野党・自民側は今後の沖縄振興策につなげようと企図する。

 意思表明について議論が始まったのは3月下旬。自民が「建議書」の名目で各会派に呼び掛けたのがきっかけだった。

 ただ、玉城デニー知事が策定に取り組む「建議書」の意義が薄れかねないとの懸念もあり、与党は当初、及び腰だった。4月中旬の各派代表者会議で自民会派長の島袋大氏が「建議書」の形式にこだわらないとの認識を示したことで、議論が本格化した。
 4月20日に各会派が委員を出して協議を開始したものの、基地問題についての記述量や政府への追及度合いに乖離(かいり)があり、文言調整は難航した。

 自民は「未来を見据えるべきだ」(自民幹部)という観点から基地問題への言及を抑え、今後の沖縄振興をメインに据えた。国会決議などと足並みをそろえ、政府との連携姿勢を演出する思惑があったためだ。

 一方で与党側は「過去の事実があるから未来も見られる」(与党県議)として、現状の基地問題への批判を強めた。双方の“方向性”の違いから、先行きには不透明感が漂っていた。

 だが、全会一致に向けて、与党は名護市辺野古の新基地建設計画の賛否を問う県民投票への言及を避けるなど、政府批判のトーンを抑える方向で譲歩。日米地位協定の改定に踏み込まなかった衆院決議を念頭に、「地位協定の抜本的改定」の文言にはこだわったが、自民も「これまでの県議会決議の範囲だ」として受け入れるなど、双方が落としどころを探った。

 全会一致でまとまったことに与党幹部の一人は「与党の主張もだいぶ盛り込まれた。結果として(オンラインで実施した4月30日の)『県民大会』で突き付けた大会決議と同様に、知事の『建議』を後ろから支えるものになる」と評価する。

 一方、ある自民幹部は「平和創造の拠点」「強い沖縄経済の構築」として掲げた、豊かな沖縄実現への道筋を示す文言の重要性を強調し、「これで一層の沖縄振興を求める足掛かりになる」と、別の観点から歓迎した。 (大嶺雅俊)