嘉手納基地と普天間飛行場の周辺住民30人が16日に起こした行政訴訟は、米軍機の飛行差し止め実現に焦点を当て、国の責任を問う裁判だ。差し止めを求める爆音訴訟はこれまでも県内外で起こされてきたが、「第三者行為論」が高い壁となり、一度も認められていない。行政訴訟では請求内容を細かく設定し、司法判断を迫る構えだ。
嘉手納と普天間の訴訟団は、訴訟外で連携してきた。普天間の原告は、2002年の1次提訴前に嘉手納の原告団に相談したこともある。第3次普天間爆音訴訟の訴訟団長で、行政訴訟原告の新垣清涼さん(72)は、嘉手納爆音を「兄貴みたいな存在」と表現する。
飛行差し止めについては、過去に2次と3次の嘉手納爆音で、米国政府を被告とする「対米訴訟」も試みた。だが、裁判所は特別の定めがない限り、民事裁判で別の国を被告にすることができないとする「主権免除論」で退けている。
沖縄本島で近接する2つの基地の周辺住民は、激しい爆音にさらされており、共通点も多い。弁護団は基地騒音被害を「政治問題ではなく、人権問題だ」と強調する。過去の爆音訴訟で騒音の違法性が認められながらも、抜本的な解決にはつながっていない。国も司法も、基地周辺住民の被害に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
(前森智香子)