済生会、沖縄に病院再建へ 戦火で消滅、支部復活目指す


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1937年に開設し、沖縄戦で消滅した済生会の那覇診療所(済生会提供)

 社会福祉法人「恩賜財団済生会」(本部・東京都港区)が、太平洋戦争中に消滅した沖縄県内の支部の復活を目指している。沖縄の日本復帰50年に当たり、本年度中にも会としての方針を決定した上で、地元自治体の意向を聞き、病院などの設置に向けた現地調査を進める考えだ。

 済生会は1911年、医療によって生活困窮者を救済しようと、明治天皇が下賜したお手元金を基に設立された。総裁は歴代皇族が務め、2013年に秋篠宮さまが就任された。40都道府県で病院や介護老人保健施設など約400施設を運営している。

 会誌などによると、沖縄には1937年に診療所を開設した。現在の那覇市役所近くにあったとされ、無償医療や巡回看護で生活に困っている人々を支えた。45年の沖縄戦で建物などが失われ、72年の日本復帰後も再興できなかった。

 新型コロナウイルス禍では、医療が逼迫(ひっぱく)した沖縄県内の病院に看護師を派遣した。ただ、炭谷茂理事長(76)は「現場のニーズが入りづらかった。支部があれば、よりスムーズに応援できる」と感じたという。

済生会本部で取材に応じる炭谷茂理事長=4月、東京都港区

 昨年7月から、沖縄を含め、戦災や経営難などで支部がなくなった計7県について、今後の在り方を検討してきた。今夏にも最終報告がまとまる見通しで、理事会などで合意を得たいという。

 沖縄は1人当たりの県民所得が全国の約7割にとどまり、子どもの貧困も課題になっている。炭谷理事長は「生活困窮者の支援は会の理念であり、沖縄での復活は最優先だ。地元の意見を聞き、どのように役に立てるかを探り、できるだけ早く貢献したい」と話した。

(共同通信)