【記者解説】激戦地土砂の採掘容認 遺骨保全の手法と実効性に課題


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沖縄戦激戦地にある糸満市米須の土砂採掘現場。後方の赤い屋根の手前が遺骨約3万5千柱を収めた「魂魄の塔」=2021年5月

 沖縄県は措置命令で求めた遺骨保全が、公害等調整委員会(公調委)が提示した合意案で担保できるとして受け入れを決めた。今後は公調委の下で作り直される事業者の届出書に合意案を反映させていく作業に移る。

 ただ、合意案で示された遺骨の収集は事業者の通報があってはじめて実施される。収骨現場のボランティアからは、重機が使われる現場で戦後77年がたち細かく砕けた遺骨に気付くことができるのかと疑問が上がる。

 今回の合意案受け入れは本島南部に複数ある土砂採掘事業者の一つとのもので、今も収集されないまま残る戦没者遺骨全体をどうするのかは示されていない。環境部自然保護課は、鉱山に限らず、開発現場で県職員が現場確認を行っている例を挙げたが、実効性を担保する県の体制も今後詰めていくとして示されていない。

(安里周悟)